展示資料一覧


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小説(噺本を含む)


仮名草子

 漢籍・仏典等の漢文や漢字の多い書に対し、仮名を主とする書の意味であり、天和2年(1682)の井原西鶴の『好色一代男』登場以前の作品をいう。純粋に小説的なもの以外に、随筆・教訓・実用書的なものまでを広く含む名称である。この時期の小説には教訓・啓蒙臭が強く、逆に啓蒙書や教訓書にも小説的な趣向が見られ、小説とそれ以外のものを明確に区別することがむずかしいことがその理由である。仮名草子には、中世風の恋物語、古典のパロディ、中国や西洋の翻訳物、名所記的なものなど、多種多様な作品がある。
   1 元のもくあみ物語 A00-霞亭126
   2 死霊解脱物語聞書 E24-425

浮世草子

 天和2年(1682)刊、井原西鶴の『好色一代男』から天明3年(1783)刊、福隅軒蛙井の『当世風俗 諸芸独自慢』まで約100年の間に、上方を中心に出版された小説をさす。特に西鶴やそれ以後の諸作家、広義の八文字屋本をいう。それまでの仮名草子の、啓蒙・教訓的な性格に対して、当世の世相・風俗をとりあげた享楽的・娯楽的な特色をもつ町人文学であり、その内容は、好色物・町人物・武家物・気質物・時代物など多岐にわたる。
   3 好色一代男 A00-霞亭144
   4 西鶴諸国はなし A00-霞亭146
   5 武家義理物語 A00-霞亭151
   6 西鶴置土産 A00-霞亭153
   7 御前義経記 A00-霞亭190
   8 好色酒呑童子 A00-霞亭181
   9 風流曲三味線 A00-霞亭223
   10 日本新永代蔵 A00-霞亭248
   11 好色訓蒙図彙 A00-霞亭1109

読本

 読書人の間における中国の白話小説(口語体小説)の流行を背景に成立した小説。寛延2年(1749)の都賀庭鐘の『英草紙』を第一作とする。それまで小説の主流であった浮世草子にはない思想性を備え、浮世草子の俗文体とは異質の和漢混淆文を用いた、知的な歴史・伝奇小説である。上方中心の前期読本は、上田秋成など文人の手慰みとして書かれ、短編小説集が主流であり、江戸中心の後期読本は、曲亭馬琴など職業的な戯作者の述作で、長編が主流である。
   12 雨月物語 A00-霞亭294
   13 西山物語 E24-430
   14 敵討連理橘 A00-霞亭295
   15 浮牡丹全伝 A00-霞亭297
   16 里見八犬伝 E24-1322

洒落本

 洒落本は、享保(1716-36)の中頃から天保(1830-44)の頃まで、はじめは上方、のち江戸を中心として刊行された一種の遊里文学で、やがて人情本へと転じ、また滑稽本をうみだすことにもなった小説形態である。書物の体裁が小本型を中心にしていたので小本とも呼ばれ、その表紙の色が茶色の物が多かったことから蒟蒻本の異称もある。
   17 両巴巵言 A00-霞亭301
   18 田舎芝居 A00-霞亭364
   19 錦之裏 E24-818

 草双紙(赤本・黒本青本・黄表紙・合巻)

 江戸時代中期から明治の中頃にかけて江戸の地で出版された絵入通俗小説の一種で、その形態は5丁を1冊として、美濃判半截を二つ折した袋綴(通称中本)の体裁をとっている。各丁は挿絵を主体に空間を平仮名の文章が埋める。なお、草双紙は史的展開にしたがって、赤本、黒本、青本、黄表紙、合巻と呼ばれる一群を総称する。
   20 夕霧阿波の鳴門 A00-霞亭591
   21 子子子子子子 E24-1310
   22 南陀羅法師柿種 A00-霞亭618
   23 三筋緯客気植田 A00-霞亭653
   24 殺生石後日怪談 E24-342
   25 偐紫田舎源氏 E24-844・E24-536
   26 白縫譚 E24-972 E24-1183 A00-4141

3 談義本・滑稽本

 談義本は、世相風俗の描写の中にさまざまな教訓をおり込んだ読み物で、講釈師風の口振りが文体となっている。体裁は半紙本3冊から5冊仕立。通俗性と滑稽味の強い『当世下手談義』の登場によって、宝暦(1751-64)期の江戸で大流行を呼んだ。ジャンルとしては、寛政(1789-1800)期に終息する。  滑稽本は、滑稽な内容を主とする中本型の小説類。狭義には享和期(1801-03)以降に式亭三馬や十返舎一九の書いたような浮世物真似や落話などの話芸と関わりの深い会話体の中本型作品群を指すが、広義には見立絵本のような境界的な性質を持つ作品も含み、多種多彩である。談義本と滑稽本は滑稽性では共通するものの、滑稽本は思想性から脱却している。談義本が前期滑稽本と呼ばれたこともあったが、現在は別ジャンルとみなすのが一般的である。
   27 当世下手談義 E24-530
   28 風流志道軒伝 A00-霞亭465
   29 奇妙図彙 A00-霞亭468
   30 東海道中膝栗毛 E24-50

人情本

 洒落本の後をうけて発生したが、洒落本との違いは遊里にとらわれないところにあり、市井の青年男女を主人公として、おもにその恋愛の成り行きをつづる。文政(1818-)初年から行われ、天保年間(1830-44)を最盛期とし、明治初年に及んだ。江戸における当代流行の風俗を描くことに加え、いきいきとした会話文を用いるところに特色がある。
   31 春色英対暖語 A00-4318

実録体小説

 お家騒動や仇討などの実在した事件や人物を扱った小説。実際には事実そのままではなく、事件の経緯や登場人物にも虚構が加わった、半ば事実、半ば虚構の作品であるが、事実譚に基づくために幕府の出版統制に触れ、刊行はされず、もっぱら貸本屋などを通して写本で流通した。講談の種本ともなり、近世小説の中ではもっとも広く読まれた小説である。実録体小説の特徴は、写本のため本文や筋が少しずつ変ってゆき、成長する点にある。分量も、もとのものの十倍、二十倍の長さになり、題名も転変する。
   32 伊賀越実録 G29-327
   33 日光邯鄲枕 G29-362

噺本

 噺本は、短い笑話を集めた作品群をいう。江戸期を通じて出版され続けた。当時の言語風俗から人情趣向が端的率直に表現されており、時代を知る貴重な資料となっている。本来話し聞くものを書き留めたという性質上、落語との関係も深い。
   34 鹿の巻筆 A00-霞亭493
   35 無事志有意 A00-霞亭536


俳諧


 貞門まで
   36 守武千句 A00-竹冷17
   37 犬子集 A00-洒竹130
   38 山之井 A00-洒竹3838

 談林
   39 大坂独吟集 A00-洒竹551
   40 虎渓の橋 A00-洒竹1159
   41 和蘭陀丸二番船 A00-竹冷35
   42 西鶴大矢数 A00-洒竹1211

 蕉門
   43 貝おほひ A00-洒竹564
   44 冬の日 A00-洒竹146
   45 蛙合 A00-洒竹568
   46 奥の細道 A00-洒竹524

 中興期ほか
   47 父の恩 A00-竹冷677
   48 秋の日 A00-竹冷86
   49 春泥句集 A00-洒竹1508
   50 から檜葉 A00-洒竹636
   51 いそのはな A00-洒竹204
   52 鶯村画譜 A00-洒竹489
   53 おらが春 A00-洒竹505

 川柳・雑俳
   54 武玉川第六編 E32-560
   55 柳多留第六編 E32-324


演劇


浄瑠璃
   56 浄瑠璃十二段の草紙(仮題) A00-5800
   57 北国落(仮題) A00-霞亭843
   58 ゆり若大じん A00-霞亭720
   59 日本蓬莱山 A00-霞亭795
   60 義経記 A00-霞亭769
   61 生玉北向八幡宮 A00-霞亭779
   62 用明天王職人鑑 A00-霞亭887
   63 卯月紅葉 A00-霞亭890
   64 ゑつくしこくせんや合戦 A00-霞亭898
   65 助六心中 并せみのぬけがら A00-霞亭932

歌舞伎(歌謡を含む)

 女歌舞伎と若衆歌舞伎が風俗紊乱の弊をもって次々と禁止され、野郎歌舞伎の時代(17世紀後半)をむかえると、歌舞伎は容色本位から技芸重視の方向にむかう。遊女評判記の影響下に成立した野郎評判記も、歌舞伎の演劇的成熟にしたがって役者評判記へと成長し、元禄12年(1699)刊の『役者口三味線』によって定型ができあがり、近世を通じて出版が続く。
 一方、狂言の粗筋を案内するものに絵入狂言本がある。現存最古の狂言本は貞享4年(1687)刊の『あすか川』で、江戸版は宝永末年(1711)に刊行を終了、上方では享保年間(1716-36)に絵尽に移行する。また今日のパンフレットやポスターにあたる劇場出版物を番付と総称し、顔見世・役割・辻・絵本(絵尽)の4種に分ける。そのほか歌舞伎をめぐる出版物には、劇書・芸論・音曲正本・せりふ正本・役者絵等があり、浮世草子や草双紙など他ジャンルの出版物にも芝居趣味の横溢したものが少なくない。
   66 古今役者物かたり A00-霞亭997
   67 野郎立役舞台大鏡 A00-霞亭979
   68 舞曲扇林 A00-霞亭1041
   69 古今四場居色競百人一首 A00-霞亭982
   70 面向不背玉 A00-霞亭945
   71 小栗十二段 A00-霞亭949
   72 野傾髪透油 SE181
   73 元禄九年岩井半四郎座番付他 A00-霞亭973
   74 古歌舞伎番付 A00-霞亭974
   75 鳴神上人北山桜他 A00-霞亭1089


その他


 狂歌・狂文
   76 卜養狂歌集 A00-4285
   77 江戸花海老 A00-霞亭1130
   78 南畝帖 E26-1184
   79 狂文あづまなまり E22-9

 随筆・日記・絵本
   80 骨董集 A90-250
   81 還魂紙料 A00-洒竹676
   82 馬琴日記 A00-4613
   83 絵本雪月花 F30-317

 国学
   84 賀茂翁家集 E22-175
   85 古事記伝 G24-929
   86 古道大意 B40-43

 漢詩文
   87 惺窩文集 E43-439
   88 徂徠集 E43-439
   89 春水遺稿 E43-1192
   90 詩本草 E45-2314



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