浮世草子


3 好色一代男 A00-霞亭144

 井原西鶴著。刊本、大本8巻8冊。原題簽左肩双辺「絵入 好色一代男 一(〜八)」。目録題「好色一代男」。第1〜7巻各21丁、8巻15丁。刊記「大坂住 大野木市兵衛板」。印記「霞亭文庫」等。西鶴の浮世草子初作。主人公世之介の好色生活を、1年に1章をあて、全54章という『源氏物語』54帖の形式に倣って綴られており、さらには『伊勢物語』、仮名草子『恨之介』などの先行作品をも意識して作られている。俳諧の素養に裏打ちされた新しい文体で、世之介という好色男の造型を通して、当世の諸国各階層の好色風俗を短編集的に描きだし、後の文学に大きな影響を与えた。展示本は西吟の跋と刊記を削り、巻8の本文末尾に「大坂住大野木市兵衛」と入木した後刷本。

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4 西鶴諸国はなし A00-霞亭146

 井原西鶴著。刊本、大本5巻5冊。自序(署名なし)。原題簽、左肩双辺「絵入 西鶴諸国はなし 一(〜五)」。目録題「近年諸国咄 大下馬」。第1〜3巻各20丁、4・5巻各16丁。刊記「貞享二年丑正月吉日/大坂伏見呉服町真斎橋筋角/池田屋三良右衛門開板」。印記「霞亭文庫」等。全35章を通して、20の諸国の珍談奇談を集めている。神仏をはじめとする様々な素材を独自の俳諧の手法を通して相対化、パロデイ化して描いた短編小説集。


5 武家義理物語 A00-霞亭151

 井原西鶴著。刊本、大本6巻合4冊(巻1と2、3と6を合綴)。貞享5年3月、自序。題簽(第3・4冊のみ)、左肩双辺、カスレ。第1・2冊各37丁、3冊19丁、4冊18丁。刊記「貞享五戊辰歳/二月吉祥日/京寺町通五条上ル丁 山岡市兵衛/江戸日本橋万町角 万屋清兵衛/大坂心斎橋筋淡路町南エ入丁 安井加兵衛梓」。印記「霞亭文庫」等。全27章の短編小説集。素材は時、場所など広範にわたり、義理に「身を果せる」武士の様々な話を集め、義理にまつわるその心情や諸相を描きだす。


6 西鶴置土産 A00-霞亭153

 井原西鶴著。刊本、半紙本5巻5冊。元禄6年、北条団水序。西鶴自序。版元の跋(団水によるものか)。原題簽、左肩双辺、巻1「絵入 西鶴をきみやけ 一」、巻2「[西鶴をきみやけ 二]」、巻3「絵入 西鶴遠記見家計 三」、巻4「絵入 西鶴御記美家計 四」、巻5「絵入 西鶴[をきみやけ]」。目録題「西くはくをきみやげ巻一(二) 大全目録」、「西くはく遠記見家計巻三 大全目録」、「西くはく置土産巻四(五)大全目録」([ ]内は補筆)。内題なし。第1巻22丁、2巻18丁、3巻14丁、4・5巻各17丁。刊記「書林/京洛寺町五条上ル町 田中庄兵衛/武江青物町 万屋清兵衛/浪花堺筋備後町 八尾甚左衛門/元禄六癸酉載冬月吉日」。印記「霞亭文庫」等。巻4の1末尾に「三ノ巻より是迄西鶴正筆也」との団水による注記あり。西鶴の遺稿集第1作。遊興の果てに零落した大尽たちの暮らしを中心に、そのなれの果ての人間のあるがままの姿を描いた短編小説集。展示本の巻4までは、柱題などの状態から初版本と考えられる。巻5は、この冊にのみ貸本屋の印記「泉元」がなく、紙質や刷りも巻4までの冊と異なり、後刷あるいは後版を取り合わせたものと推測される。


7 御前義経記 A00-霞亭190

 西沢一風著。刊本、大本8巻8冊。原題簽、左肩双辺「風流 御前義経記 一(〜八)」。目録題・尾題「御前義経記」。内題「風流義経記」(巻1)。第1・2巻各21丁、3巻22丁、4・5巻各20丁、6巻18丁、7巻19丁、8巻22丁。刊記「元禄十三辰歳/三月大吉祥日/大坂 油屋与兵衛/万屋仁兵衛/雁金屋庄兵衛/京 上村平左衛門 刊板」。印記「中井文庫」等。『義経記』等にみえる義経伝説を、当世の町人生活・好色生活におきかえて描いたもので、「面影うつる何々」と素材を明示して、その変形ぶりを強調している。また謡曲・浄瑠璃・歌舞伎などの趣向を多用するなど演劇的方法の摂取により、西鶴没後低俗化していた好色物浮世草子の打開をはかった。


8 好色酒呑童子 A00-霞亭181

 桃林堂蝶麿著。刊本、半紙本5巻5冊。自序。原題簽、左肩双辺「好色 酒天童子」。第1巻22丁、2〜4巻各18丁、5巻15丁。刊記「正月吉日/日本橋南/みすや/又右衛門板」。印記「蝶麿」「霞亭文庫」。伊勢宇治山田の藤浪右近と5人の男達の好色話を、大江山酒呑童子の物語に擬して描く長編物。元禄8年(1695)刊。改題本に『好色栄花女』がある。


9 風流曲三味線 A00-霞亭223

 江島其磧作。刊本、横本6巻6冊。題簽欠。目録題「風流曲三味線」。第1巻42丁、2巻46丁、3巻36丁、4巻39丁、5巻40丁、6巻36丁。印記「霞亭文庫」。刊記「宝永三年戌七月吉日/ふ屋町通せいぐはんじ下ル町/八文字屋/八左衛門板」。第1巻1話、2巻1話、3〜6巻1話の全3話。元禄16年(1703)の出版広告ののち、構想を幾度も変更したためか複雑な内容で、驕奢好色と敵討の事件を主として、その他種々の事件をとりあわせた構造になっている。趣向重視、演劇趣味などの其磧の特徴がすべて盛り込まれた代表作。


10 日本新永代蔵 A00-霞亭248

 北条団水著。刊本、大本6巻合2冊。自序。原題簽左肩双辺「日本 新永代蔵 今世長者鑑」。目録題・内題「日本新永代蔵」。上下冊各55丁。刊記「正徳三年巳正月吉日/江戸日本橋南一町目 須原屋茂兵衛/京師聚落 丸屋伊兵衛/同二条観音町 平野屋佐兵衛」。印記「霞亭文庫」。団水の遺稿集で代表作。目録に暖簾を描く形態やその文句、内容まで、悉くに西鶴の『日本永代蔵』の模倣がみられるが、西鶴作品に比べると教訓的言辞がかなり多い。展示本は初版本。


11 好色訓蒙図彙 A00-霞亭1109

 吉田半兵衛著。刊本、小本3巻3冊。貞享3年3月、自序。原題簽(下巻のみ)、中央双辺「〈好/色〉訓蒙図彙」。内題「好色訓蒙図彙」。上巻33丁、中巻38丁、下巻34丁。刊記「花洛/出水三郎兵衛/高辻昌陽軒/開板」。『訓蒙図彙』の形式に倣い、絵を主として好色風俗を図解した絵入百科事典。類書が少なく、当時の風俗資料として貴重。

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