読本

12　雨月物語　A00-霞亭294
　上田秋成著。刊本、大本５巻３冊。明和５年(1768)３月、剪枝畸人（秋成）序。原題簽、左肩単辺「雨月物語　上（中・下）」。内題「雨月物語」。尾題「雨月物語」。上冊20丁、中冊32.5丁（うち広告半丁）、下冊40.5丁（うち広告3.5丁）。刊記「三都／発行／書林／江戸大伝馬町二丁目　丁字屋平兵衛／同　京橋弥左衛門町　大島屋伝右衛門／同　下谷御成道　紙屋徳八／同　馬喰町二丁目　菊屋幸三郎／同　浅草福井町壱丁目　山崎屋清七／京都三条通御幸町　吉野屋仁兵衛／大坂心斎橋北久宝寺町　河内屋源七郎　版」。印記「渡辺蔵書」「貸本商大野屋金七」等。先行の読本『英草紙』『繁野話』『西山物語』を継承発展させた怪異小説集。膨大な数の中国小説・故事、および本朝の古典・故事・謡曲等の重層的利用や、所収の９つの短編の円環的連鎖といった独自の構成により、怪異譚を通して人間の情念の世界を描く。


13　西山物語　E24-430
　建部綾足著。刊本、大本３巻３冊。明和５年(1768)２月、金竜敬雄老杜多序。原題簽、中央無辺「西山ものかたり　上」、「にし山物語　中」、「にしやま物語　下」。内題「西山物語」。上冊20丁、中冊28丁、下冊29丁。刊記「文化十年酉十二月／浪華書林／心斎橋通北久太郎町／加賀屋善蔵」。印記「南葵文庫」「陽春廬記」「真印子蔵書記」「太田文庫」等。明和４年に京都郊外愛宕郡一条寺村で起きた、渡辺源太による妹かゑの斬殺事件を題材として、古物語風に書かれた和文小説。作中の古歌や古語の出典・語義などに関する自注が施され、古学入門書としての一面も持つ。展示本は後印本。


14　敵討連理橘　A00-霞亭295
　容楊黛著。刊本、中本１巻１冊。安永10年(1781)１月、自序。内題「敵討連理橘」。57丁。刊記「東都書林　本材木町一丁目　西宮新六板」。浄瑠璃『驪山比翼塚』を典拠とし、文体や表記法、段の構成や人物造形などに浄瑠璃らしさが反映されている。中本型読本の嚆矢とされる作品。


15　浮牡丹全伝　A00-霞亭297
　山東京伝著。刊本、半紙本３巻４冊。文化５年(1808)２月、自序。原題簽、左肩飾り枠「浮牡丹全伝　団七黒兵衛釣舩三撫／一寸徳兵衛三侠伝奇」。内題「小説浮牡丹全伝」。尾題「浮牡丹全伝」。第１冊25丁、２冊22丁、３冊31丁、４冊47丁。刊記「文化六年己巳正月発行／書林／江戸本石町十軒店西村宗七／同四谷天馬町二丁目住吉屋政五郎」。印記「渡辺蔵書」。浄瑠璃・謡曲・白話小説などを典拠とし、本筋の敵討に怪異譚をちりばめる。第４冊末尾に後帙の内容が予告されているが、実際には出版されずに終わった。体裁は唐本を模す。


16　里見八犬伝　E24-1322
　曲亭馬琴著。刊本、半紙本、８輯40巻42冊（９輯を欠く）。各輯に自序。題簽、左肩無辺「里見八犬傳 肇輯 巻一」等。内題「南総里見八犬傳 巻之一」等。刊記、肇輯「文化十一年歳次甲戌冬十一月吉日發販／刊行書肆／大坂心斎橋筋唐物町南ヘ入 森本大助／江戸馬食町三丁目 若林清兵衛／本所松坂町二丁目 平林庄五郎／筋違橋御門外神田平永町 山崎平八」、２輯「文化十三年歳次丙子冬十二月吉日發販／大坂心斎橋筋唐物町 河内屋太助／江戸馬食町三丁目 若林清兵衛／本所松坂町二丁目 平林庄五郎／筋違御門外神田平永町 山崎平八」、３輯刊記欠、４輯「文政三年歳次庚辰冬十一月吉日／刊行書肆 大坂心斎橋筋唐物町 河内屋太助／江戸馬喰町三丁目 若林清兵衛／本所松坂町二丁目 平林庄五郎／筋違御門外神田平永町 山崎平八」、５輯「文政六癸未年春正月發販／大坂書林 心斎橋筋書唐物町南ヘ入 河内屋太助／江戸書林 馬喰町三町目 若林清兵衛／本所松阪町二町目 平林庄五郎／筋違御門外神田平永町 山崎平八」、６輯「文政十丁亥年春正月吉日發行／大坂書林 心斎橋筋唐物町 河内屋太助／江戸書林 馬喰町三町目 若林清兵衛／江戸筋違御門外平永町 山崎平八／江戸書林 数寄屋橋通リ加賀町 涌泉堂正舗 美濃屋甚三郎」、７輯上「文政十一年戌子春三月吉日發行／大阪書林心斎橋筋唐物町南江入 河内屋太助／江戸書林 数寄屋橋御門通リ加賀町美濃屋甚三郎梓」、７輯下「文政十三年庚寅正月吉日発行／江戸小傳馬町三丁目 書林 丁子屋平兵衛／江戸数寄屋橋御門通リ加賀町 書林 美濃屋甚三郎梓」、８輯上「天保三年歳次壬辰夏五月吉日發行／江戸書行 京橋水谷町 美濃屋甚三郎／本所松坂町二町目 平林庄五郎／小傳馬町三町目 丁子屋平兵衛板」、８輯下「天保四年癸巳春正月吉日發行／大坂心斎橋筋博勞町河内屋長兵衛／同所同町 河内屋茂兵衛／江戸 本所松阪町二町目 平林庄五郎／小傳馬町三町目 丁子屋平兵衛板」。安房里見家の八犬士の活躍を描いた壮大な史伝体小説で、完結までに28年を要した長編大作。構成の構築性、場面や人情の描写、人物の性格や行動論理の整合性などに、馬琴の理想とする小説観が遺憾なく適用されている。展示本は後刷本で、初刷本ならば６輯の刊記を貼紙により「文政十三年庚寅」と訂正しているはずである。

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