浄瑠璃


56 浄瑠璃十二段の草紙(仮題) A00-5800

 古活字本。大本1冊。題簽欠、表紙左上墨書「小野於通作浄瑠璃十二段の草紙 梓刻ノ年号ナケレド/寛永板也/慶長活版」。75丁。印記「陽春廬記」「尾州名護屋/文林堂/菱屋金兵衛」「達磨屋五一」。「十二段草紙」中、最古の刊本。慶長頃(1596-1614)の刊行と推定される。

[IMAGE 56-2] [IMAGE 56-1]


57 北国落(仮題) A00-霞亭843

 作者未詳。刊本、中本1冊。原題簽欠。後補題簽、左肩双辺、中央に「〈四天王〉頼光勇力諍」、外題右に「らいくはうゆふりきあらそひ」、外題左に「江戸とらや源太夫正本」、外題下に「大傳馬〓屋三町目」。内題なし、ただし内題の位置に「江戸和泉太夫正本也」とあり、下に「和泉」の壷形印を押す。20丁。刊記「右者江戸和泉太夫直之以正本/写之令開板者也/万治三歳六月吉日/御成町/又右衛門板」。印記「小山田文庫」。頼光四天王のひとりである坂田金時の息子金平ら子四天王の活躍を描く、いわゆる金平浄瑠璃(ただし親四天王を主人公とした作品も含めることがある)。金平浄瑠璃を創始した江戸の和泉太夫の現存正本中、金平が登場する最初の作品として注目される。なお展示本の表紙と題簽は、別正本のものの取り合わせと推定されている。


58 ゆり若大じん A00-霞亭720

 作者未詳。刊本、半紙本1冊。原題簽、左肩双辺、中央に「ゆり若大じん」、外題左に「日くらし小太夫正本」、外題下に「太夫本/八もんしや/八左衛□」。内題「ゆりわか大じん」。19丁(うち1丁欠)。刊記「寛文二年壬寅二月吉日 太夫正本也」。印記「霞亭図書」。幸若舞曲『百合若大臣』を説経浄瑠璃に改作したもので、詞章も多く幸若によっている。幸若とは、室町中期から末期にかけて流行をみた簡単な舞を伴う語り物で、軍記物語に題材をとり、戦国武将に愛好された。また説経浄瑠璃とは、仏教の説経が和讃・平曲・謡曲などの影響を受けて歌謡化した語り物で、初めは鉦をたたきながら路傍で語られたが、次第に簓・胡弓・三味線をとりいれ、操り人形劇と提携して興行化されたもの。展示本は、説経「百合若大臣」諸本中最古の刊本。


59 日本蓬莱山 A00-霞亭795

 津打治兵衛作。刊本、半紙本1冊。原題簽(方簽)、右肩、中央に「山本土佐掾」、右に「藤原孝勝」、左に「作者津打治兵衛」と3行に記す。内題「日本蓬莱山 土佐掾正本」。15丁。刊記「二条通寺町西入北側/山本九兵衛版」。『竹取物語』の趣向や地獄廻りの伝説を取り入れ、妊婦殺しや牛車で子供を轢き殺すなどの凄惨な場面を交えながら、からくりを多く使用した見せ場の多い作品。本作は、山本角太夫が土佐掾と受領する貞享2年(1685)9月以降の上演と推定される。表紙見返に挿絵あり。


60 義経記 A00-霞亭769

 作者未詳、土佐少掾正本。刊本、半紙本7巻7冊。書題簽、左肩双辺「義経記 初(〜七)之巻」。内題「義経記 初(二之〜七之)巻」。初巻15.5丁、2巻15丁、3巻16丁、4巻14丁、5巻15丁、6巻15.5丁、7巻16丁。刊記、初巻「右此本者太夫直伝之以正本一字/一点無誤写之令板行者也/元禄二歳/巳ノ正月吉日/大傳馬三町目/うろこかたや新板」、2巻「右者太夫直之正本也 うろこがたや 新板」、3巻「右此本ハ太夫直伝之正本を以/令板行者也」、4巻「元禄二歳/己(巳)ノ正月吉日 うろこがたや 新板」、5巻「右此本者世間雖有数多或者落字/或者誤有之故今又太夫直之以正本ヲ/改之令板行者也/元禄二年巳正月吉日/大傳馬三町目/うろこかたや/新板」、6巻「右此本者太夫直伝之正本以一字/一点あやまりなく写之令板行/者也/□禄二歳正月吉日/大傳馬三町目/うろこかたや/新板」、7巻「右此本者世間ニ雖有数多殊之外落/字誤有之故今又太夫直伝之以正本写之/令板行者也/元禄二己巳年正月吉日/大傳馬三町目/うろこかたや/新板」。印記「霞亭文庫」。各巻6段、17行絵入。節章の記載がなく、句切のみ句読点で記されるところから、読むことを目的に作られた本と考えられる。展示本には原題簽を欠くが、初巻1丁表に「土佐少掾橘正勝語リ本」との朱書があり、原題簽を備える別本により土佐少掾正本と確認される。


61 生玉北向八幡宮 A00-霞亭779

 作者未詳。刊本、半紙本1冊。内題「生玉北向八幡宮 信濃掾正本」。12丁。刊記「出羽信濃掾正本/細工作者/山本弥三五郎/直正本屋/西沢藤九郎新板」。足利義政を倒そうとする外道の退治と、高麗国討伐が脚色された作。3段目ではからくりが多用されたことが、挿絵からうかがえる。山本弥三五郎が飛騨掾と受領する元禄13年(1700)以前の刊行とと推定される。

62 用明天王職人鑑 A00-霞亭887

 近松門左衛門作。竹本筑後掾正本。刊本、半紙本1冊。原題簽、左肩双辺「用明天王/職/人/鑑」、右側に「ようめいてんわうしよくにんかゞみ」、左側に「付リ 仏は金色の身あがり 日本まぶの始り 竹本筑後掾正本」、下に「大坂/かうらい橋/壱丁目/正本屋/九兵衛」。脇方簽、灰朱色、中央上無辺、中央に「竹本筑後掾」、右側に「豊竹若太夫/竹本頼母/人形 辰松八郎兵衛」、左側に「作者 近松門左衛門」。内題「用明天王職人鑑 大あやつり 近松門左衛門作」。11丁。刊記「千秋万歳 正本屋/山本九兵衛新板」。宝永2年(1705)刊。印記「小山田文庫」等。16・17行絵入。竹田出雲が竹本座座本となり、近松を座付作者に迎えてからの第1作で、近松円熟期の時代浄瑠璃。三段目の鐘入の段は、からくりを大胆にとり入れた華やかな一場である。表見返にからくりの舞台図がある。

63 卯月紅葉 A00-霞亭890

 近松門左衛門作。竹本筑後掾正本。刊本、半紙本1冊。原題簽、左肩双辺「卯月紅葉」、左側に「かさや与兵衛同おかめひやうばんの心中」、上に絵があり「おかめ/心中/与兵衛」、下に「大坂/かうらい橋/壱丁目/正本屋/九兵衛」。脇方簽、灰褐色、中央上、単辺、中央に「太夫 竹本筑後掾」、右側に「ワキ 竹本頼母/三味線 竹澤権右衛門」、左側に「作者 近松門左衛門/人形 辰松八郎兵衛」。内題「〈与兵衛/おかめ〉ひぢりめん/卯月紅葉 近松門左衛門作」。9丁。刊記「大坂かうらい橋一丁目正本屋九兵衛新板」。16行絵入。見返に「舞台絵及び口上」あり。宝永3年(1706)大坂竹本座初演の世話浄瑠璃。お家騒動風の構想の中に、おかめ与兵衛の梅田心中と与兵衛ひとりが生き残る悲劇を描く。翌年初演の続編『卯月潤色』で、与兵衛はおかめの一周忌を前に跡追心中し、ドラマは完結する。

[IMAGE 63]

64 ゑつくしこくせんや合戦 A00-霞亭898

 刊本、半紙本2巻2冊。原題簽(下巻のみ)、左肩双辺「ゑつくし/こくせんや合戦」、下に「大坂/かうらい橋/壱丁目/正本屋/九兵衛」。上巻9丁、下巻5.5丁。上部に文、下部に絵をあしらった浄瑠璃絵尽。下巻本文中に「正徳六年ことし」とあり、本書の刊年は正徳6年(1716)と知れる。近松作の時代浄瑠璃『国性爺合戦』が、前年冬より大坂竹本座で記録的な長期興行を続けていた間の出版である。(酒井わか奈)

[IMAGE 64]

65 助六心中 并せみのぬけがら A00-霞亭932

 作者未詳。刊本、半紙本1冊。内題「助六心中 並 せみのぬけがら」。9丁。奥書「右之本令吟覧頌句音節墨譜/等不残毫厘令加筆候可有開/版者也 宮古路豊後/重而予以著述之本令校合候/畢全可為正本者歟/大阪天神橋筋農人橋花屋町 正本屋平兵衛版」。印記「霞亭図書」。2段。10行絵入。助六心中物の浄瑠璃には元禄13年(1700)の『大坂千日寺心中』、同年山本角太夫の『万屋助六』、その改題本の『蝉のぬけがら』などがあり、さらにその踏襲作『助六心中 并せみのぬけがら』で都一中が大当たりをとったのは宝永3年(1706)以前のことである。本書は一中系の正本。ただし道行部分を欠く。(酒井わか奈)