歌舞伎(歌謡を含む)


66 古今役者物かたり A00-霞亭997

 著者未詳。菱川師宣画。刊本、大本1冊。題簽欠。内題「古今役者物かたり」。17丁(欠丁あり)。刊記欠。印記「好文堂」「只誠蔵」。芝居絵本。野郎歌舞伎時代の人気役者の当り芸を集めた芝居の手引書で、評判記や狂言本の要素もあわせ持つ。本書は再版本で、初版本には「浮世絵芸術」103号に紹介されたシンドラー・コレクション本がある。シンドラー本は全22丁、刊記「延宝六年清明月/通油町本問屋開板」。


67 野郎立役舞台大鏡 A00-霞亭979

 著者未詳。刊本、横小本1冊。貞享4年(1687)刊。原題簽、左肩双辺「〈新/□〉役者大評判 全」。内題「野郎立役舞台大鏡」。目録題「役者大評判」。71.5丁。刊記「貞享第四丁卯歳/壬月吉日/京出水通大宮西へ入町/和泉屋八左衛門板行」。印記「おくり」「小仁蔵本」「秋州文庫」「ときくに」「霞亭図書」等。野郎評判記から役者評判記への転換期に位置づけられる書。役者目録の最初に立役をおき、若女方や若衆方を後まわしにしている点が、容姿の評判よりも技芸の評判を重視していることを示す。本の体裁も従来の半紙本から横本に変えられ、のちの定型に近づいた。


68 舞曲扇林 A00-霞亭1041

 河原崎権之助著。上巻写本、下巻刊本。半紙本2巻合1冊。洛北下枩隠士蝉憂婆塞序。自跋。原題簽、中央双辺「<古風/今様>舞曲扇林」。内題「<古風/今様>舞曲扇林」。上巻26丁、下巻29丁。印記「南畝文庫」「蜀山人」等。出雲のお国の出自異聞や若衆歌舞伎の十六番小舞など歌舞伎の由来に始まり、舞の技巧の本質、舞の技術、作劇や囃子などを論ずる。能太夫出身の立場から著された歌舞伎舞踊の理論書。元禄2(1689)ないし3年の成立とみられる。展示本の上巻は大田南畝による透写。


69 古今四場居色競百人一首 A00-霞亭982

 童戯堂四囀・恋雀亭四染著。元禄6年(1693)1月、性悪軒四泥子序、頓作庵四藤鹿跋。刊本、大本1冊。書題簽、左肩双辺「古今四場異百人一首 全 鳥居派元祖清信画/元禄六年版」。序題「古今四場居色競」。序のあとに「古今四場異百人一首/童戯堂四囀作之/頭書ほめ言葉/恋雀亭四染云之」と記す。61丁。序刊記「癸酉正月日」。後序刊記「みつのとのとりの〓月はしめ」。印記「古好亭蔵本印」「真顔文庫」「林忠正所蔵印」「雅俗文庫」「霞亭文庫」。役者評判記。役者100名(うち1名は作者か)を歌仙絵に擬して描いたものに、「小倉百人一首」をもじった狂歌賛と、ほめ言葉風の評文を加えた書。表題の「四場居」は中村座、市村座、森田座、山村座の江戸四芝居を指す。演芸珍書刊行会と稀書複製会第7期に複製があり、前者は現在は失われた旧松廼舎文庫本を底本として展示本により序・跋を補い、後者は展示本を底本として破損部を珍書刊行会本によって補う。


70 面向不背玉 A00-霞亭945

 白石彦兵衛作。刊本、半紙本3巻2冊。扉題「面向不背玉」。上冊14.5丁、下冊16丁。刊記「ふ屋町通せいくはんじ下ル町西側八文字屋八左衛門新板」。印記「霞亭図書」等。元禄10年(1697)京都早雲座上演の絵入狂言本。上方狂言本は通常10丁前後だが、本書は丁数を15丁前後、冊数も上下2冊にして内容を詳細にした、いわゆる上本の早い例である。挿絵の丁の上部には主要役者の評を載せる。出演役者は座本山下半左衛門以下、竹島幸行左衛門、芳沢あやめら。忠臣藤原鎌足と王位の簒奪を狙う横神王子の抗争を描く大職冠物であるが、蘇我入鹿を悪人としなかったところに特徴がある。怨霊事や「水の中より海女人出、虚空に上がり、宙にて馬にのり、空をかけり行」大からくりなど、見せ場が多い。

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71 小栗十二段 A00-霞亭949

 初代市川団十郎(三升屋兵庫)作。刊本、半紙本1冊。元禄16年(1703)7月刊。書題簽、左肩双辺「小栗十二段」。内題(大名題)「〈星合照手/当流源氏〉小栗十二段 市川団十郎作/鳥居清信画 全」。11.5丁。刊記「正本屋小兵衛/元禄拾六癸未七月吉日開板」。印記「霞亭文庫」。絵入狂言本。元禄16年(1703)7月江戸森田座上演。出演役者は団十郎、荻野沢之丞など。説経『小栗判官』の後日談ないし外伝を構想した作品。東京芸術大学にも1本が所蔵されるが、2本の間には異同があり、芸大本の役人替名から落ちた宮崎十四郎を補ったのが展示本である。

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72 野傾髪透油 SE181

 八文字自笑著。刊本、横小本3巻3冊。原題簽、左端双辺、京之巻「九重の花〓」、大坂之巻「難波江の水櫛」、江戸之巻「武蔵野の月額」。目録題「野傾髪透油」。京37.5丁(うち広告半丁)、江36.5丁、坂35.5丁。刊記「享保二年酉卯月吉日 八文字屋八左衛門板」(京之巻)。各巻の前半が役者評判記、後半が浮世草子という変則的な構成をとる。浮世草子の部分は、宝永6年(1709)序、江島其磧作の浮世草子『遊女懐中洗濯』の京・江戸・大坂之巻の版木を流用したもの。また本書京之巻の広告は、前年刊の評判記『役者願紐解』の版木を流用したもので、『願紐解』に「右に西川筆」とある部分を「右に西川風」と改刻したのは後刷本、「右に西川筆」のままの展示本は初版本である。


73 元禄九年岩井半四郎座番付他 A00-霞亭973

 芝居番付他の貼込帖。半紙本1冊。10丁。絵本番付「如虎石橋富貴英」(天明6年(1786)大坂中の芝居)、同「准源氏大内言葉」(安永9年(1780)大坂角の芝居)、「〈新/板〉女いけんかゞみ 全/并ニ大□がうたものがたり」(刊記「正徳五年/未ノ九月吉日/ばくろ町四町目/はんもと/中村屋新板」)、祭文「八ぎやく/あまころしさいもん/よしのたゞのふやつし」(元禄10(1697)・12年大坂嵐三右衛門座「生瀬川尼殺し」における三右衛門・浅尾十次郎の舞台姿を掲載)を収め、裏表紙には役割番付の覆刻「御評判の心中」(元禄9年1月大坂岩井半四郎座上演の三勝半七の心中狂言)を用いる。


74 古歌舞伎番付 A00-霞亭974

 芝居番付の貼込帖。横本4冊。計118丁。印記「霞亭文庫」「霞亭図書」。第1帖、宝永5〜元文5年(1708-40)の京都顔見世番付22種。帖中最古の資料である宝永6年霜月、都万太夫名代・座本、四条南西芝居の根本極(顔見世番付)はここに含まれる。2帖、享保6〜宝暦2年(1721-52)の京都顔見世・役割番付21種。3帖、享保14〜延享3年(1729-46)の京都顔見世・役割番付29種。4帖、宝暦6〜明和元年(1756-64)の京都役割番付24種。この帖の番付はすべて2枚組。

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75 鳴神上人北山桜他 A00-霞亭1089

 薄物の寄せ本。半紙本1冊。33丁。収められた資料は、せりふ正本「鳴神上人北山桜 咄のだん かけあいせりふ」「ういらう売のせりふ」(宝暦元年(1751)江戸市村座)、薄物「傾城今様道成寺」(元文5年(1740)大坂中村富十郎座)、同「金売吉次邯鄲枕」(元文5年大坂佐野川花妻座)、ほめ言葉「江戸鹿子松竹梅 山下金作山づくしほめことば」(宝暦5年江戸中村座)、「おきせぶし」「よいそうだぶし」「かはりなぞかけよぶし」、豊後節「やつし掛行燈 道行思ひの柳 久右衛門うれいの段」、やつし浄瑠璃「宇治川先陣物語 青物づくし」、薄物「振分髪妻乞曽我 道行別の遠山」(寛保元年(1741)大坂佐野川花妻座)、同「けいせいあらし山 花舎現の〓」(元文4年京都亀屋座)、同「天竺徳兵衛聞書往来 道行野路のつがひ鳥」(宝暦7年大坂大松西助)の13種。