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41 朝顔三十六花撰 萬花園主人(横山正名) 嘉永7年跋 1冊 [南葵文庫]

 近世後期の園芸ブームを代表するのが朝顔の栽培であった。身分の上下を問わず、この草花は愛好された。特にその花弁の珍奇性がもてはやされたのである。本書が記す36種の朝顔は突然変異体の図譜である。著者の横山(1833~1908)は幕臣。慶応3年に陸軍奉行となり、維新後は警視庁に勤めたが、後に趣味を生かして植木商に転じたという異色の経歴を持つ人物。序文を記した杏葉館主人は旗本の鍋島直孝(佐賀藩主・鍋島直正の兄)で、やはり朝顔栽培を趣味としていた。(佐藤賢一)

42 慶賀写真草 川原慶賀 天保7年刊(河内屋喜兵衛 他) 上下巻2冊 [田中芳男文庫]

 著者川原慶賀(1786~1862?)は出島蘭館の絵師として著名。シーボルトの江戸出府に従って数々の写生画を残したことで知られているが、本書は川原の画業の中でも植物写生画を国内向けの刊行物として公表したことで興味深い。全56種の草木図譜を収める。凡例には花の形態として雄蘂と雌蘂の別があることを記し、本文にはヨーロッパの学名も併記している。植物の器官(花や果実など)を「解体」して描くということも強調しているのが特徴的である。なお、川原はシーボルト事件に連座して入牢するが、その後も天保13年に国禁に触れることがあって追放刑に処せられている。(佐藤賢一)

43 梅花正図 他 不明 欠 1冊 [田中芳男文庫]

 梅にまつわる文章、図譜3編を合冊したもの。(『韵勝園梅譜』、『梅花正図』、『名所草木考 梅部抄』)その中の『梅花正図』には彩色された梅の花の図が138点ほど収録されている。最後の11点を除いて各花の品種名、所在地または所有者などが記されている。近世の園芸文化の豊かさを実感できる一冊である。著名な梅の花としては太宰府の「飛梅」も収録されている。奥書に「明治廿三年六月蒔田厚徳氏ノ本ヲ借写ス 田中芳男」とある。(佐藤賢一)

44 菜魚図讃 服部範忠 元文3年自序 1冊 [田中芳男文庫]

 著者の服部範忠は生没年を詳らかにしないが、江戸の町医で、享保年間に徳川吉宗の本草学に関する諮問に預かっていたことが知られる。自序文によれば、若い頃より画業に親しんでいたので、近隣の「菜魚を通賣する駅」の野菜や魚を写生して薬効などの讃を付けたものが本書である。日常的な食品の中にも医術のよって立つ理を見いだすという姿勢が顕著である。野菜(コンニャクのような加工品も含む)を179種、魚介類を147種収録する。当時の食生活、生鮮食品の実態を知る上でも参考となる資料であろう。本書の奥書は次のように述べる。「此書ハ明治十五年五月伊藤圭介翁耊筵之際杉田玄端君ヨリ出品セル謄本ヲ借リ写ス所ナリ同書ノ同家ニアル理由ハ聞カサレトモ原稿ノ如ク思ハル 明治十六年一月 田中芳男記」本書の随所に野菜の蘭名が記されているが、ここに述べられているとおり、杉田家に所蔵されていたことの副産物であろうか。(佐藤賢一)

45 日本の生け花
45 Conder, Josiah.
45 Floral art of Japan, being a second and revised edition of The Flowers of Japan and the artof floral arrangement by Josiah Conder, with illustrations by Japanese artists Tokyo, Printed by the Siuyei Sha; published by Kelly and Walsh, 1899. [エリオット文庫]

 コンドル(1852-1920)は工部大学校の教師、帝国大学の講師さらには鹿鳴館、お茶の水のニコライ堂などの建築家として有名。彼は、建築―造園―生け花という流れで、生け花に興味を持ったのであろう。1889年に「日本の生け花の理論」(The theory of Japanese flower arrangements)を発表、「池坊」の実例をそえる。2年後、展示本の初版を日本画家による挿絵付きで出版。第2版(展示本)では尾形月耕が加わる。1898年に月耕の作品が明治天皇に買い上げられたことから、コンドルも序文で彼の名前を挙げてお礼を言う。明治20年代を過ぎても生け花に対する海外の反応は少ない。コンドルはエール夫人(Mrs.C.W. Earle)の『サリー庭園のポプリ』(Pot-pourri from a Surrey Garden, 1897)しか挙げていない。モースは1917年になってもコンドルの本が生け花の本として役に立つと言っている。日本の生け花を書物を通して紹介した人物として、コンドルはもっと知られて良い。(髙野 彰)

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