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36 絵本工夫之錦 舟山輔之 寛政10年刊(須原屋市兵衛 他) 3冊

 江戸時代の日本人によって研究された数学のことを和算と称しているが、本書はその和算書の1冊である。著者・舟山喜一輔之(1738~1804)は仙台藩士で、幕府天文方の関流和算家・山路主住の門弟である。(関流は著名な和算家、関孝和を元祖と仰ぐ和算の一大流派。)本書は和算の問題を集めた「算題集」であるが、類書とは異なり、「絵本」と題されているだけあって挿絵がふんだんに盛り込まれている。いずれも関流の和算を基礎としたものが述べられているが、雅俗取り混ぜた題材に仮託して算法の問題が述べられている。(佐藤賢一)

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37 諸国名所帖 田中芳男 集録 明治21年成 折本1冊 [田中芳男文庫]

 田中芳男(1838~1916)の旧蔵書、しかも彼自身が手掛けた資料に少しでも触れる機会があれば、即座に分かることは、その旺盛な好奇心と収集欲である。ともかくありとあらゆるものを集めてスクラップブックに貼り込んで保存する。その成果が累々と蓄積され、壮大な宇宙を魅せるのである。著名なところでは田中が海外出張中に収集した資料、名刺、切符、その他諸々を貼り混ぜた『外国捃拾帖』がある。例えば、1867年のパリ万博で田中が何をどのように見ていたのかが手に取るようにして分かる資料集がこれである。さて、この『諸国名所帖』も、田中が数多く残した貼り混ぜ帖の一冊である。内容は、全国各地の名所、旧跡にまつわる一枚刷りをそのまま貼り付けたものである。信濃の温泉案内記があるかと思えば、大坂の水害被災地図、松島や函館の鳥瞰図、水産博覧会の見取図まで貼り込まれている。明治になってからは博物学の方面で殖産興業に邁進した田中であるが、彼の意識の所在を垣間見させる一冊であろう。

 同時に展示をしている写真は田中芳男がパリで撮影をしたもので、『外国捃拾帖』に貼られている一点である。旧蔵者の田中芳男は信濃国飯田出身の博物学者・行政官。数多くの本草学、博物学関連書が子孫により総合図書館に寄贈されている。(佐藤賢一)

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38 五明算法 前集 思山逸民(家崎善之) 著 文化11年序 2冊 [川北朝鄰寄贈]

 本書も和算の算題集であるが、遊び心をいかんなく発揮した一点である。全50問収録されている問題のすべてが扇(または団扇)の扇面内に図形を容れるという題材を取り扱っている。(上巻で問題と図を提示し、下巻に数値解と説明文が載せられている。)非常に凝った図形の問題ばかりで、いかにも趣味としてのパズルの雰囲気を醸し出している。平和な江戸時代の趣味人が生んだ、娯楽的要素の強い和算書である。著者家崎善之(思山逸民と号す)は江戸八丁堀の灰屋。桑名藩の不破直温に和算を学んでいる。

 現在、総合図書館には約1,000点ほどの和算資料が収蔵されているが、その大部分は明治30年代に当時の数学科教授・菊池大麓の尽力によって蒐集されたものである。たまたま大正年間にこの資料群は帝国学士院(現・日本学士院)に学術的調査のために一括して貸し出されていたため、関東大震災での焼失を奇跡的に免れている。数多くの和算家・天文学者の自筆書や旧蔵書を有する一大コレクションである。(佐藤賢一)

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