知の職人たち−南葵文庫に見る江戸のモノづくり−
特別展示会概要記念講演会展示の趣旨はじめに南葵文庫とは南葵文庫と東京大学江戸時代の科学技術とモノづくり展示構成について展示資料概観個別資料解説関連見取り図展示資料一覧
ご挨拶特別展示会附属図書館
展示の趣旨

「知の職人たち −南葵文庫に見る江戸のモノづくり−」の構成について

 冒頭にも述べたとおり、本企画展は、図書館の蔵書を用いた展示陳列となる。図書館は本来、蔵書を閲覧・参照のために収蔵しているわけで、陳列・展観することを第一義とはしていない。しかしながら、東京大学のごとき歴史を有する図書館においては、様々な種類の蔵書が集積し、文書館や博物館のごとき様相を呈することは否めない。そのような場における展示はいかにあるべきか、企画者にとっては頭を悩ませる点である。

 「一点豪華主義」ともいうべき展示法がある。これは、ある特定の資料(蔵書)に着目して、時代背景や関連する資料を系統的に集めて展示する方法である。

 一方、南葵文庫のようにコレクションそのものを展示の対象とする場合、資料群が重層的に存在しているので、いくつもの「柱」となる展示の流れを構成することが可能となる。しかし、そのような展示を実際に手がけると、決まって「あれもこれも」という状況になってしまう。つまるところ、観覧者に散漫な印象のみを与えるばかりである。それを回避するために、それぞれの柱をつなぐ「横糸」のストーリーが求められる。資料同士の連関を網の目のように繋いでみせることで、コレクション自体の重層性、多様性を再確認してもらうことが必要となる。このような展示をすれば、観覧者はそれぞれの興味に従った見学ができるのではないだろうか。資料そのものへの興味を先鋭化させることもよいであろう。また、資料同士の思いもかけぬ異色の組み合わせ、対応付けを楽しむこともできるはずである。初心者から専門家向けに自在に構成を組み立てることもできる。

 そこで、今回の特別展示では一つの資料を提示しながらも、解釈や説明の視点はできる限り複数性を保つよう意識している。最初に、資料そのもの内容・分野による解説[→展示資料概観(1)]を掲げ、次いで、資料の著者や旧蔵者、関連人物などをたどることで展示資料のもう一つの側面を浮き彫りにしてみたい。[→展示資料概観(2)]

 総合図書館に南葵文庫が寄贈され、そして南葵文庫になぜこの展示資料がたどり着いたのか、そのような歴史の演じた不思議さを本特別展によって感じていただけたならば、企画者として望外の喜びである。

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