「近代日本と万博幻想:植民地主義から開発主義へ」
講師:吉見俊哉 東京大学社会情報研究所教授
日時:平成15年11月17日(月)10時30分〜12時
週明け月曜日の午前という時間にもかかわらず多くの参加者があり、活気のある講演会となった。
まずはスライドを用いて、おもに戦前の博覧会の歴史を振り返ることから始まった。このなか
で、欧米諸国による植民地の展示のしかたと、そこにみえる帝国主義的思想についての話があった。
また日本という国のみられ方や、自らジャポニスムを演出した日本の展示についても言及された。
次に内国勧業博覧会の歴史を中心に、日本における博覧会の発展と展開について話があった。
これらのまとめとして、従来の博覧会というものの機能として、次の四点が挙げられた。
- 博覧会という空間は「眼視の力」「眼目の教え」の場であること(娯楽的な見世物と違い、
展示物を比較選別する眼力をつけること)
- 序列化する機能をもつこと(出品物を審査し順位をつけることで、技能を見える形にする
こと)
- 帝国主義的イデオロギーを提示すること
- 日常生活への浸透
次に戦後の博覧会についての話があった。戦後は博覧会の政治的文化的影響力が低下したため、
博覧会を開催する意義が薄れていったこと、その一方で、高度経済成長と結びついて大阪万国博
覧会が大変な動員数を記録したことが述べられた。またこの大阪万博の幻想を引きずっているか
にみえる愛知万博についてもふれられた。
最後に、今後博覧会というものを考えるとき、「アーカイブ」「知識の蓄積」「データベース化」と
いった視点があるのではないか、という指摘があった。
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