bar02 資料解説

前へ次へ8.安政江戸地震(1855年)の摺り物に見る、もじり、見立

  安政江戸地震の直後から大量に出回った摺り物には、絵の周囲が文字で埋め尽くされたものが多い。それらは、絵を見るだけでなく、文字を読まなければ面白さが分からないのであるが、しかし文字を読んだとしても、我々にはその意味が分かりづらいことが多い。特に、もじりや見立になっているものは難解である。

 もじりであっても、見立であっても、それは、パロディー化される元が広く普及しているということが前提になっている。地震後の摺り物に見るもじりや見立は、歌舞伎狂言、流行の唄、商家の引札、往来物、読物、見世物口上などが元となっている。これらは我々にはなじみが薄く、それ故に我々にはもじりの面白さが通じにくいのであるが、当時の平均的な教養のある人にとっては、ごく普通に目にするもの、耳にするものばかりであった。

 もじりや見立になっている地震関係の摺り物に共通しているのは、パロディー化される元は様々であるが、結局は、地震が起こった、家屋が崩れた、避難生活が続いているなど、同じようなことを記しているということである。つまり、摺り物の作者側としては、もじりによって何か特別な状況を伝えようとしているのではないように思われる。どちらかといえば、皆が現在置かれている状況を、誰もがよく知っている何かを元に、いかに面白可笑しく、うまくもじるかという遊びとして書いているのではなかろうか。

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[参考文献]

  • 北原糸子『地震の社会史 安政大地震と民衆』 講談社 2000年 (講談社学術文庫 1442) 
(湯浅淑子)

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