よみがえる幕末明治の人々(常設展:2005年7月〜10月)

Page 1 2 3 4

[目次に戻る] [常設展示のページへ] [特別展示会のページへ] [ 附属図書館のページへ ]
※画像をクリックすると大きな画像が見られます。

蕃書調所(ばんしょしらべしょ)1856-1862

 安政3年(1856),江戸幕府により洋学研究・教育機関として江戸に設立された。幕府は,嘉永6年(1853)のペリー来航や西欧諸国との和親条約締結を契機に,軍事力や外交能力の充実が緊急の課題となったため課題の解決に必要な洋学の研究・教育を担当する機関として新たに「蕃書調所」を設置し,洋書の翻訳,洋学教育,洋書および翻訳書の検閲,翻訳書の印刷・出版にあたらせた。
 設立当初,授業は蘭学一科で始められたが,外交上や西洋の科学技術を摂取する必要から万延元年(1860)から文久2年(1862)にかけて学科新設が行われた結果,教育内容は英・仏・独語の教育にまで広がり,洋書の調査機関を意味する「蕃書調所」の名称が実態にあわなくなったため文久二年「洋書調所」と改称された。翌年にはさらに「開成所」と改められ,幕府の教育機関の中でも最重要の位置を占めるに至った。
 「開成所」は明治維新とともに新政府に移管され,「開成学校」として再編された。「開成学校」は東京大学法・理・文三学部として発展した。

Dictionary <展示資料>
J.E. Worcester著『Dictionary of the English language』 (Boston, 1860)(A100:939)
蕃書調所」と「外国方」の印が押されている。



徳川御三家(とくがわ ごさんけ)

 徳川家康を祖とする江戸幕府将軍家の親族で血縁が近く,大名の中で最も格式が高いとされる。将軍家に実子がない場合には,これらの家から継嗣をだすと言われている。
 尾張徳川氏は,御三家のうち,最も兄にあたる家で尾張国の領主であることからこの名がある。徳川家康の九男義直を祖とする。名古屋に居城を構えた。
 紀伊徳川氏は,徳川家康の十男頼宣を祖とする。元和5年(1619)紀伊・伊勢五十五万五千石に移され,紀伊国和歌山城に入ったのに始まる。
 総合図書館で所蔵する「南葵文庫」は紀伊徳川家徳川頼倫氏によって寄贈された紀伊徳川家の旧蔵書のコレクションである。
 水戸徳川氏は,徳川家康の十一男頼房を祖とする。慶長14年(1609),家康により水戸二十五万石を与えられたのに始まる。水戸徳川家は参勤交代制の確立以降も例外的に藩主は江戸藩邸に常住した。(定府制)

尾府内庫本清州越町人由緒書 <展示資料>
『尾府内庫本清州越町人由緒書(びふないこぼん きよすごし ちょうにん ゆいしょがき)』(G27:485)
名古屋藩の蔵書を示す「尾府内庫図書」の印あり。尾張徳川氏の蔵書印にはこの他に「張府内庫図書」「尾陽内庫」「内府蔵書」がある。
文應皇帝外記他 『文應皇帝外記他(写本)』(H20:2001)
和歌山藩の蔵書を示す「紀伊國徳川氏図書記」の印がある。紀伊徳川氏の蔵書印には,この他に「紀園用」等がある。



昌平坂学問所(しょうへいざか がくもんじょ)1630-1871

 江戸幕府の学問所。寛永7年(1630)に三代将軍家光から林羅山が上野忍丘の地を賜り,そこに孔子廟と書庫・塾舎を設立したのに始まる。正式には「学問所」というが,敷地の一部が,昌平坂に面していたため「昌平坂学問所」あるいは「昌平黌(しょうへいこう)」と称された。
 元禄3年(1690),徳川綱吉の命により神田湯島に移転,林家三代目鳳岡(ほうこう)が大学頭(だいがくのかみ)となり,儒教教典の講釈を行われた。松平定信の老中就任により,朱子学を幕府の正学として擁護し,他流門は幕府に採用しない(寛政異学の禁)方針がとられたため,官学としての昌平黌の地位回復が図られた。
 昌平黌は設立当初から林家の家塾と幕府の学問所を兼ねた半官半私的な性格をもって運営されてきたが,寛政9年(1790)に林家の家塾と切り離し,幕府直轄の「学問所」が成立し,幕府教学の中心となって多くの人材を育成した。
 幕末には「蕃書調所」や「医学所」とともに幕府の教育施設として全国でも規模を誇るものとなったが,維新に際し,新政府に接収され,「昌平学校」と改称,明治2年(1869)には,大学と改められ再開したが,明治3年(1870)学制改革のため休校となった後,明治4年(1871)に廃止された。

蟻亭閑言 蟻亭閑言(表紙) <展示資料>
『蟻亭閑言』(A90:606)
「学問所」の所蔵資料を示す「昌平坂」の印(右頁右下の黒字)と「番外書冊」の印(表紙右上)が押され,学問所の所蔵資料の中での扱いを知ることができる。その他にも「兼霞堂蔵書印」等旧蔵者の印が押され,この資料が辿ってきた過程を知ることができる。


Page 1 2 3 4

[目次に戻る] [常設展示のページへ] [特別展示会のページへ] [ 附属図書館のページへ ]