東京大学図書館の略史(関東大震災後)


 総合図書館の歴史の第二部は、震災の復興から今日にいたるまでである。

 震災の復興にあたって広く国内外から援助が寄せられた。1923年9月には当時の国際連盟で、東京帝国大学図書館復興援助の決議がなされ、イギリス、アメリカ、ベルギー、中華民国、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、シャム、イスパニア、スウェーデン、スイス、ロシア、国際連盟、その他、総計36の国および機関から援助が寄せられている。震災で全焼した建物については、アメリカのロックフェラー財団からの寄付が寄せられた。こうしたことは、現在総合図書館を利用する我々も忘れてならないことであろう。海外から寄せられた漢籍についていえば、中華民国、廣東籌賑日災總会から寄贈された1万5千点が主なものである。

 また、国内でも各方面からの寄贈、寄託が行われ、蔵書が充実することとなった。なかでも最も大きかったのが紀州徳川家の南葵文庫の寄贈であった。その中には江戸時代に購入され、保存されてきた漢籍、また南葵文庫に収蔵されていた島田重礼、依田学海などの漢学者の旧蔵漢籍も多く含まれていた。

 寄贈書としては、それ以外にも森鴎外谷干城等の旧蔵書が漢籍を多く含む文庫として注目される。

 また、この機会に新たに購入された漢籍文庫もかなりにのぼる。なかでも、宋版やわが国の古版本を多く擁する渡邊青洲の青洲文庫、朝鮮本を中心とする阿川文庫、また東洋史学科の教授であった市村さん次郎が民国に赴いて購入したいわゆる覺盧本2万6千冊などがある。

 かくして、関東大震災の痛手からたちなおり、再び第二次大戦の戦火もくぐり抜けて、現在にいたっているのである。


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