東京帝國大學圖書館建築概要

本建築は東京帝國大學構内西側中央部に位し、ジョン・デ・ロック・フェラー・ジュニア氏より寄附せられたるものにして、大正十五年一月起工し昭和三年十一月竣工せり。建築概要左の如し。

一、建築の規模
          建築面積・・・・・・・・・・・三八七五・八平方米(一,一七四・五坪)
          建築延面積・・・・・・・・・一七一四三・五 〃 (五,一九五・〇坪)
          閲覽室 研究室・・・・・・・・ 二六四〇・〇 〃 (  八〇〇・〇坪)
          書庫・・・・・・・・・・・・・三一一八・五 〃 (  九四五・〇坪)

   軒高地盤より扶壁上端迄
          中央五階の部 ・・・・・・・・・・・・・・二八・四八二米 (九四尺)
          正面両端部                一九・三九二〃 (六四尺)
          書庫                   一九・七八六〃 (六二尺)

一、様   式

 外壁には貼瓦及貼石を用ひ色彩及手法共近接せる既設建物と類似せる近世式とす。

一、平面計畫

正面玄關を入れば大廣間あり、大階段に依り直ちに主階なる目録室及書籍貸出所に達す。目録室の前方建物の全幅に互り面積一〇三〇平方米を有し、約五百人を容るゝを得べき一般閲覽室あり、主階東翼は指定書閲覽室に充て同西翼には特別閲覽室あり、東翼の第一階及第二階は研究室とす。

主階西翼には目録編纂室あり、其下部第二階の一部及第一階全翼は事務室とす。正面玄關の左右には新聞雜誌閲覽室及記念室、第二階玄關上部には特別陳列室を有す。
以上の外第四階には、其两翼部に演習室正面に休憩室、自由閲覽室を有し、地階には新聞書庫、汽罐室、書籍消毒室、寫眞室、製本室、荷解室、物置等を配置す、

一、書   庫

書庫は全建物の中軸に位し廣間大階段及書籍貸出所の後方にあり、地階の外二階建にして、地上の各階は硝子床を以て更に之を三つの層に分ち合計七層とし、床面積三一一九平方米を有す。
尚地階には貴重書籍を入るべき安全庫あり。
書架は總て鋼製とし、架構鐵柱に取付けたるものにして、安全庫内には置書架を配置す。

一、構造の大要

軸部は鐵骨、鐵筋コンクリート造とし、壁体、床、屋根、及階段等は鐵筋コンクリート造、建具は大体に於て鐵製とす。

一、諸 設 備

煖房は眞空式蒸氣煖房装置を採り、一般閲覽室には温度及濕度を調整し得る換氣装置を設け、各階廊下に消火栓を置き書庫内及事務室の一部には書籍運搬用フリ((ママ))トを、正面两側には客用昇降機を備へ、尚書籍貸出しに便する爲め眞空式カード輸送管を以て貸出所と書庫とを連絡す。

一、附屬工作物

大玄關の前庭には噴水塔を有する貯水池を中心として植樹帯を設け、之を挾んで東西に相向ひて二棟の休憩室を配す。休憩室の一は換氣用の空氣吸入塔を有し、他は消火用の鑿井揚水喞筒室を有す。

一、設計監督者及請負者

本建築は東京帝國大學圖書館建築部の設計及監督に係り、請負者は株式會社大林組、三菱商事株式會社、東京建鐵株式會社、三井物産株式會社、外八十餘名なり

(「東京帝國大學圖書館竣工記念 [絵葉書] 」包紙の記載より)