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一 紫式部と源氏物語

紫式部日記
“左衛門督、「あなかしこ、このわたりに、若むらさきやさぶらふ」とうかゞひたまふ。源氏にかかるべき人見え給はぬに、かのうへは、まいていかでものし給はんと、聞ゐたり。”

1.紫式部日記

(群書類従 検校保己一集 巻第321上 日記部2)
文政3 [1820] 序 刊本 【書庫A30:81(青洲文庫)】
*【 】内は、総合図書館での配架場所・請求記号(コレクション名等)、以下同じ。

 『紫式部日記』の寛弘5(1008)年11月1日の記事で、源氏物語千年紀の根拠とされる史料のひとつ。主人公である紫の上(「若むらさき」)と光源氏(「源氏」)の名が登場する。
 展示本は、国学者・塙保己一(1746-1821)が編纂・刊行した『群書類従』所収のもの。


2.紫式部日記絵詞

(日本絵巻大成 小松茂美編 9)
東京 中央公論社 1978 【開架721.2:N71:1.9】

 1を絵巻に仕立てたもので、若宮生後五十日の祝宴での公卿たちの酔態を描く。右手の三人のうち中央の人物が、「このあたりに、若むらさき(紫の上)はおいでですか」と戯れに問うた、左衛門督・藤原公任とされる。
 原本は鎌倉時代の制作で、東京・五島美術館所蔵(国宝)。


さらしなの日記
“源氏の五拾余巻、ひつ(櫃)にい(入)りながら、...え(得)てかへる心地のうれしさぞいみじきや。”

3.さらしなの日記 菅原孝標女

(扶桑拾葉集 源朝臣光圀編集 巻第6)
元禄2 [1689] 序 刊本 【書庫E22:91(三条公爵家本)】

 『更級日記』の治安元(1022)年の記事。14歳の少女(奇しくも1008年生)の目を通して、当時の貴族たちの源氏物語に対する人気のほどがうかがえる。また、紫式部の死後数年の時点で既に五十余巻であったこと(現在は全54帖)がわかるのは貴重である。
 展示本は、水戸黄門として知られる徳川光圀(1628-1700)編の『扶桑拾葉集』所収のもの。


 <館蔵 江戸時代の源氏物語あれこれ>

 総合図書館では、江戸初期の古活字本から平成の現代語訳まで様々な種類の源氏物語を所蔵している。その中から、江戸時代のものをいくつか取り上げてみよう。  4は、京の公家であった三条家の旧蔵書。列帖装(料紙を重ねて括ったものを、さらにまとめて折り側を糸綴じしたもの)という古風な装丁法や美麗な表紙が目を引く。横長の5は明治・大正期の文豪・森鴎外の旧蔵書、小型の6は紀州徳川家の南葵文庫旧蔵書で、いずれも絵入りの刊本である。
 7は、俳人・歌人の北村季吟(1624-1705)がそれまでの注釈を集成し、自らの考えを加えたもので、源氏物語のテキストとして江戸時代を通じて最も広く流布した。8は、南北朝時代の成立かとされる梗概書(ダイジェスト版)の絵入り刊本で、こちらも江戸時代に広く利用された。

三条公爵家本源氏物語

4.源氏物語

写本 【書庫E23:165(三条公爵家本)】

5.源氏物語

[京都] 林和泉掾 万治3 [1660] 刊本 【書庫 鴎E23:162(鴎外文庫)】

6.源氏物語

刊本 【書庫E23:207(南葵文庫)】

7.湖月抄

[京都] 村上勘左衛門[ほか] 延宝元 [1673] 跋 刊本 【書庫E23:446(萩野本)】

8.源氏小鏡 巻下(宇治十帖)

江府 [江戸] 須原屋茂兵衛 刊本 【書庫E23:216(南葵文庫)】
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