一 紫式部と源氏物語![]() “左衛門督、「あなかしこ、このわたりに、若むらさきやさぶらふ」とうかゞひたまふ。源氏にかかるべき人見え給はぬに、かのうへは、まいていかでものし給はんと、聞ゐたり。”
1.紫式部日記 『紫式部日記』の寛弘5(1008)年11月1日の記事で、源氏物語千年紀の根拠とされる史料のひとつ。主人公である紫の上(「若むらさき」)と光源氏(「源氏」)の名が登場する。 2.紫式部日記絵詞 1を絵巻に仕立てたもので、若宮生後五十日の祝宴での公卿たちの酔態を描く。右手の三人のうち中央の人物が、「このあたりに、若むらさき(紫の上)はおいでですか」と戯れに問うた、左衛門督・藤原公任とされる。 ![]() “源氏の五拾余巻、ひつ(櫃)にい(入)りながら、...え(得)てかへる心地のうれしさぞいみじきや。”
3.さらしなの日記 菅原孝標女 『更級日記』の治安元(1022)年の記事。14歳の少女(奇しくも1008年生)の目を通して、当時の貴族たちの源氏物語に対する人気のほどがうかがえる。また、紫式部の死後数年の時点で既に五十余巻であったこと(現在は全54帖)がわかるのは貴重である。 <館蔵 江戸時代の源氏物語あれこれ> 総合図書館では、江戸初期の古活字本から平成の現代語訳まで様々な種類の源氏物語を所蔵している。その中から、江戸時代のものをいくつか取り上げてみよう。
4は、京の公家であった三条家の旧蔵書。列帖装(料紙を重ねて括ったものを、さらにまとめて折り側を糸綴じしたもの)という古風な装丁法や美麗な表紙が目を引く。横長の5は明治・大正期の文豪・森鴎外の旧蔵書、小型の6は紀州徳川家の南葵文庫旧蔵書で、いずれも絵入りの刊本である。 ![]() 4.源氏物語5.源氏物語6.源氏物語7.湖月抄8.源氏小鏡 巻下(宇治十帖) |
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