大気海洋研究所図書室からご紹介するのは『Challenger Report』です。
<Challenger Report(Report on the scientific results of the voyage of H.M.S. Challenger during the years 1873-76)について>
英国の木造軍艦を改造した研究調査船・チャレンジャー6世号が、エジンバラ大学のC.W.トムソン教授(博物学)を隊長として、世界の様々な海域において科学的調査を行う探検航海を行いました。1872年12月に出発し1876年5月に帰着するまでの間には、日本にも寄港しており、1875(明治7)年4月から6月に、横須賀造船所で船体を補修し、相模湾→石廊崎→大島港→神戸→瀬戸内海→横浜の調査をしています。
チャレンジャー6世号は、各地で水深測量、水温観測などを行うとともに、それまで無生物帯と考えられていた深海から多数の新種生物を採集しました。この調査は、その功績によって、近代海洋学の幕開けを告げる記念碑的大事業であるとされています。
探検の成果として、1880年から1895年にかけて刊行された一連の報告書の通称が『Challenger Report』です。本文約3万ページ、図版3千枚以上に及ぶ全40巻50冊の大作で、調査結果及びそれらの解析・研究で得られた発見や知見がまとめられています。
当資料は、本学の総合図書館をはじめ国内外の図書館でも所蔵しており、当室にあるものが唯一無二というわけではありませんが、海洋調査史上非常に重要な資料です。寄贈元である三井海洋生物学研究所、そして当研究所の前身組織の一つである東京大学海洋研究所から大切に受け継いできました。
当室でのデジタル化の措置は行っておりませんが、HathiTrust、BHL (The Biodiversity Heritage Library)で一部がオンライン公開されていますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください:
https://catalog.hathitrust.org/Record/001473257
https://www.biodiversitylibrary.org/bibliography/6513
・海洋研究所図書室.”海洋研究所図書室資料紹介(学内所蔵特殊コレクションシリーズNo.16)” 図書館の窓. 2003, vol.42, no.6, p. 92-94.
・”チャレンジャー号報告書 (Report on the Scientific Results of the Voyage of H.M.S. Challenger during the years 1873-76)” 東京海洋大学附属図書館.
https://lib.s.kaiyodai.ac.jp/library/maincollection/challenger.html 閲覧日2024-6-24