2005年に、私が講師として初めて大学院の講義を立ち上げる際に、真っ先に参考にしたのが、当時出版されたばかりのこの「Health Monitoring of Aerospace Structures」です。
約20年前、構造ヘルスモニタリングの研究分野は世界的に急速な盛り上がりを見せていましたが、その手法や基礎となる学問は多岐にわたるため、系統立てて解説している書籍がほとんど在りませんでした。そのような中でこの本に出会い、講義の骨組みを検討すべく、時間を見つけては読み込んでいました。
今でもこの本の表紙を見ると、当時の必死な気持ちが蘇ってきます。この本は、欧州の当該分野の研究者・技術者らが共同執筆したもので、航空機を対象とした構造ヘルスモニタリングの概念から始まり、その主要な要素技術である光ファイバセンサや超音波を用いたモニタリング手法、そして取得データから構造物の損傷を診断するための信号処理法、さらには、航空機構造への適用可能性を評価する実構造試験まで紹介されています。
私の講義も20年の間にアップデートを繰り返しましたが、今でもこの本で学んだことが活かされています。現在では、電子ブックも東大の図書館にありますので、あらためて開いてみたところ、今でもあまり古さを感じさせない内容で、むしろ私の知識が増えた分、さらに多くのことを学べそうです。そして何より、現在私が取り組んでいる研究テーマ自体も、この本のトピックに近いことをあらためて認識し、もう一度丁寧に読み返したい1冊です。
書籍名:
「Health Monitoring of Aerospace Structures: Smart Sensor Technologies and Signal Processing」
Edited by W.J. Staszewski, C. Boller, and G.R. Tomlinson
(John Wiley & Sons, 2004)