私は大学院生としての5年間を駒場の数理で過ごしました。当時、数理図書館で気になった文献をコピーしては手元に置き、それだけで勉強した気になっていたものです。記憶というのはやはり現場に来ると急に呼び起こされるもので、20年弱を経て数理へ戻ってきた今でも、数理図書館を訪れるたびに院生時代を思い出します。
電子書籍や電子ジャーナルが広く普及しとても便利になったものの、やはり好きな本は手に取って読むことが醍醐味です。気に入った論文は印刷し読むこともまた然り。今でも電子化されていない貴重な文献は多々あり、数理図書館へ出向く必要に迫られる場面はすくなくありません。そんな折、オフィスの片隅またはパソコンの中に院生時代に何となくコピーしていたそのハードコピーが見つかることがしばしばあり、自分には先見の明があった、などと自賛したりします。
ここ最近は多忙になり、数理図書館へ出向く回数はめっきり減りました。しかしそれでも、蔵書1000万冊超からの予期せぬすばらしい一冊に邂逅することを期待しつつ、目的なしに足を運ぶくらいの心の余裕をもてるよう日々過ごしてゆきたいところです。