あびだるま だいびばしゃろん

26. 阿毘達磨大毘婆沙論     残1巻 1帖


宋版大蔵経零本之一
唐釈玄奘奉詔訳 南宋湖州思渓版
上下単辺 無界 毎半折6行17字 界高24、5糎

 この大毘婆沙論は思渓版大蔵経の零本である。思渓版とは、南宋の初めに湖州帰安県思渓邨の円覚禅院において王永従ら王氏一族の喜捨により出版された大蔵経をいい、湖州版とも呼ばれる。各紙の継ぎ目に刻工名を刻し、本帖には、馮辛、厳志、葉宗、董珎、董明、趙宗、趙昌、陳景の名が見える。

 本館所蔵の一帖は巻113を残すのみ。 巻末に「奉渡唐本一切経内/建長七年(乙卯)十一月九日於鹿島社遂供養(常州笠間)前長門守従五位上行藤原朝臣時朝」との識語を墨書する。藤原時朝に由来する一切経の零本は各地に散在し、この大毘婆沙論もその一。

 もともと大蔵経の折本は、一帖一帙、十帖を一套に収めたとされるが、本館では他の宋版零本、即ち涅槃経疏三徳指帰、中阿含経、法華文句科、曇無徳部四分律刪補随機羯磨の四帖と併せて一帖五帙にまとめる。これは旧蔵者以来の姿である。

(丘山新・古勝隆一)


次の資料青洲文庫解説展示会入口へ戻る