ししゅう

13. 詩緝   不分巻 巻子本8巻


宋厳粲撰 天保2年海保元備拠昌平坂学問所蔵鈔本 重本
無辺 無界 1行25字前後 縦約16糎強 長巻8本
各巻標上に「厳華谷詩緝」ならびに篇題の記載あり

 本書は、その序ならびに条例によれば、六経の伝疏に厄せられること詩において最も甚だしく、宋朝新意を争出するにいたるもなお闕くところあり、因って新たに諸家の説を集め、補うに自説を以てし、詩人をして紆余涵泳の趣を了せしめ、かつ童習に便ならしめたものという。呂祖謙読詩紀、朱熹集伝にならぶ大著であるが、当時我国に伝本稀で、巻末の漁村跋文に昌平坂学問所蔵鈔本により重鈔したことがみえる。

 巻七に「版心有味経堂三字」とあるのは、原鈔本が明趙府味経堂刊本によったものであることを示す。跋文によれば、鈔写は天保2年10月6日に始まり、12月11日に終わったという。なお味経堂本は天保15年姫路藩仁寿館により覆刻されているが、本書はそれ以前のもの。内閣文庫には仁寿館本の弘化中印本があるが原鈔本はみえず、以後失われたものであろう。

 各巻標裏に「南葵/文庫」「雙桂/楼」「海保先生/自所書録」の印記がある。

(高山 節也)


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