17 スペンサー・ブーム


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 スペンサー(1820〜1903)の哲学がめざしたものは一種の総合体系である。彼は、自然から人間・社会に至る宇宙の存在が、すべて単一で同質のものから出発し、要素の分化によって異質なものの集合となり、ついで最終的には有機的で緊密な結合体へと向かって進むという、同一の原理によって進化することを示そうと努めた。その社会進化論によれば、社会はごく単純な原始社会から始まって、階級の分化と相互の抗争を経、人間が自分の諸能力をすべて発揮できる理想的な世の中に至る。最終的に到達するのは、自由の精神が確立された社会だが、しかしそれに至る過程で、準備段階として権力に服従する段階を経なければならない。つまりスペンサーの社会進化論は、現状をこれらの進化の段階のどこに捉えるかによって、自由民権思想を励ますことにもなれば、国権論の教科書としての役割もはたすことになる。スペンサーの哲学は、19世紀後半の流行思想となったが、その切り口は多様で、明治初年の日本にも複雑な影響をもたらした。

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