2 初期の英語文典
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- Pinneo's Primary grammar of the English language for beginners. [総合図書館 洋書教科書:529]
簡潔な解説と、よく工夫された豊富な練習問題を特徴とする初級文法書。慶応義塾で英語入門用に好んで用いられた。総合図書館には明治初期に東大黎明期の学生たちに使用された洋書教科書が残されているが、展示書はその1冊。ピネヲの文法書は3冊残されているが、いずれも「大学東校」の印記がある。後にフルベッキの意見も手伝ってドイツ医学へシフトする以前の医学部は、このピネヲ文典を用いて英語も学習していたのであろう。
- ピ子ヲ氏原板, 英文典直譯. 明治3年(1870) 5月 [個人蔵]
慶応義塾では明治2年にピネヲ文典の原典を復刻出版して、学生の便宜を図っていた。この「直訳」本は原典との対照を前提とした訳本で、原典の語順通りに、一語ずつ助詞のてにをはを附して訳され、それぞれの傍らには一文全体での語順を示す漢数字の番号が添えられている。こうした漢文訓読式の翻訳は、すでに幕末のオランダ語学書の翻訳にも見られる。
- Quackenbos, First Book in English grammar. 1867 [総合図書館 洋書教科書:510,523]
慶応義塾がピネヲ文典を好んだのに対し、大学南校では英語入門用に、きわめて早い時期からクワッケンボスの文典を用いた。問答体によって文法事項を教えるというその記述スタイルが、外国人教師が直接外国語で教える大学南校に適していたからであろう。展示書には「東京開成所」「大学南校」の印記と、貸与用の教科書であることを示す複本番号とが記され、学生の手になるものであろう、鉛筆書きのノートが見られる。クワッケンボスは当時のアメリカの教育者で、数学、物理学、米国史、作文などの初等中等用教科書を著し、そのいずれもが明治初年の日本の学校でも教科書として盛んに用いられた。
- 格賢勃斯, 大学南校助教訳, 英文典直譯. 明治3年(1870)5月 [五十年史料 78]
序文(漢文)には、近来英学に志す者が「日ニ増シ月ニ加フル」状況なので、教師も指導に手が回りかね、学生がみずから学習する助けに翻訳する、したがって訳文も「敢エテ文辞ヲ巧マズ」と述べられている。ただし関係代名詞節の直訳には手を焼いたらしく、たとえば This is a flower which he likes. 「コレハ花彼ガ好ム所ノ『花』デアル」という具合に、先行詞を繰り返して訳し、かつ2度目には『 』をつけて先行する語との関係を明示する方式を採用している。
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