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リーダー( Reader )すなわち読本とは、19世紀前半のアメリカにおける教育の大衆化とともに整備された英語学習システムである。
スペリングから始まって、初等文法からかんたんな読み物へ、さらに文学作品のアンソロジー、または当時の一般教養の到達点と目された修辞学や朗読法教授まで、5〜6冊の分冊によって構成される。
第一リーダーから順次高次のリーダーに進むことによって、英語国民が独学でも高度の英語を学習できることをめざした教科書である。
明治初期の日本が英語の教科書として採用したのもこのリーダーであり、当時は、ユニオン・リーダー、ウィルソン・リーダーなどが代表的なリーダーであった。
リーダーは、当時の英語の学力を計る基準としても用いられ、上級学校の英語の試験の範囲を示すのに、しばしば「ユニオンの第四リーダー程度」などと公示された。
これは江戸後期以降の漢学が、四書、五経、左国史漢という順を踏んで学習され、やはり試験範囲を示すのに「漢書読了程度」などと公示するのに対応する。
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▲ユニオン第三リーダー(医学校典籍方) | ▲ユニオン第六リーダー(第一大学区開成学校図書) |
洋書教科書の中には、多くは鉛筆書きで、語釈が書き込まれているものが見られる。
授業の下調べか、あるいは授業中の書き込みであろう。
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A. Ganot, Traite elementaire de physique. 大学南校や開成学校のカリキュラムで「ガノー氏物理学」として掲げられる教科書。 |