ほけきょう しゅうげんき

1.法華経集験記   2巻 1軸


新羅釈義寂輯 平安初期鈔本 闕巻上首尾 上下白界
無行界 毎一紙25行内外 毎行30字内外界高27糎内外
尾題法華集験記

 中国では六朝から唐代にかけて観世音信仰が流行し、観世音菩薩の加護により危機を脱するという類の感応譚が数多く伝えられた。本書はこの流れを受けて新羅の地で編纂されたもので、集神州三宝感通録、冥報記など先行の霊験記から話題を集める。輯者の釈義寂は、法華、涅槃、般若、梵網などに通じた新羅の名僧で、著作の多くは佚したが梵網経菩薩戒本疏なども伝わる。

 他書からの転載が主だとはいえ、僅かにこの巻子のみが伝わる孤本ゆえに、また平安古書の旧式を窺わせるゆえに貴重である。もとは二巻二軸であったものを一軸に仕立て直したことが上下巻の継ぎ目からわかる。

 この法華経集験記は関東大震災の猛火を奇しくも免れた一本である。明治期に本館に帰したが、その経緯は知られていない。この本には複製本(昭和56年、貴重古典籍刊行会)がある。

(丘山新・古勝隆一)


次の資料焼け残り本一覧展示会入口へ戻る