博物学


                            

 博物学者は知的好奇心のかたまりである。自然を博物学的なまなざしによって見、めずらしいものを収集・採集し、記録し、分類しようとする習性が身に付いている。明治以降、博物学はアカデミックな学問としてはしだいに重要視されなくなったが、植物学や動物学等の個別科学がどれほど進歩しようと、生物はあくまでも個体であり、総体としてとらえる必要が残るため、博物学は今日でもその存在意義を失っているわけではない。博物学の伝統は今日動物行動学や動物生態学等に残っている。

 科学的な博物学の主な淵源は、中国渡来の医術に伴った薬の学問である本草である。だから、古い時代の博物学関係の資料は植物に関するものが多い。

 日本の博物学が自然科学としての形態を整えるようになったのは、江戸時代の中期であり、江戸後期は博物学熱が高揚した。当時は写真機が発達していなかったので、自然を観察する場合、手で書き写す以外なかった。

 博物館、植物園、動物園は、吉見俊哉氏の言葉を借りれば、博物学的な空間が都市の中へと拡がっていった例である(中公新書『博覧会の政治学』より)。

 ここでは、田中芳男文庫のなかから博物関係の資料を植物関係動物関係に分けて21点展示してみた。


                            

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