『植学浅解・初編』 [ショクガク センカイ ショヘン] 田中芳男・閲 小野職愨・訳 久保弘道・校 文部省 明治8年(1875) 半紙本36丁 挿図115 【請求記号:T83-129】
明治10年(1877)東京大学に生物学科が設置され、日本でも大学における動物学・植物学の教育・研究が始まった。しかしそれ以外に両分野を含む博物学の普及活動に貢献したのが文部省博物局であった。ここでの活動を推進したのが田中芳男である。田中は小野職愨の援助を受け、多くの博物学教育関係の図書を刊行した。本書はそのうちの一冊である。本書は John Lindley 著『School Botany』(London, Longman)の訳本である。内容は挿図入りの植物外部形態の解説書であり、初学者に供する目的でつくられた。挿図は日本の植物に置き換えられている。また、翻訳にあたって訳語は、前掲『植学訳筌』に基づいて用いられている。
本書では、本草と植物学という意味の異なる語が混同されて用いられており、両者の違いが十分に理解されていないこと、また書名も植物学でなく植学という古い語を用いるなど、本草から植物学への過渡期の学問の状況を示している点で博物学史上意義のある資料といえる。