天野信景(1663-1733)は江戸中期の国学者で、儒学や仏教にも通じた。奥書より信景が『孟子』の講義を行っていたこと、その講義の受講者からの質問に対する回答として本書を著したことがわかる。信景は朱子学の影響を強く受けており、本書においても直接『孟子』を読み解いているのではなく、朱子学の大成者である朱熹(1130-1200)の『孟子集註』を参考にしている様子が各所に窺える。