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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

53 シュミット・カメラ
広瀬秀雄著、『物理学集書』8、河出書房、1947

広瀬秀雄は、位置天文学、測地学、太陽系小天体、天文学史を専門とする多才な天文学者で、東京天文台台長も務めた。天の川、星雲・星団の観測的研究には、明るく視野の広い光学系を持つ望遠鏡が不可欠である。天文学者はその目的のために絶えず新しい望遠鏡の改良と発明に努めてきたと言ってよい。シュミットカメラは、1932年にドイツの光学技術者シュミットが発明製作した特殊な反射望遠鏡で、それ以前のどの望遠鏡よりも広視野で明るい光学系を持つ、画期的な発明だった。東京天文台に入所してブラッシャー天体儀と称する古い望遠鏡で苦労して観測していた広瀬は、その頃シュミットカメラ発明の報に接した。早速シュミットカメラの光学理論を研究した。大戦中は、軍用の光学機器としても有用であるとの認識から、軍事研究の一環として大量生産が企てられ小型の試作機を1台製作したが、敗戦によって中断した。本書は、敗戦直後の荒廃した研究環境が復旧する以前に書上げられた広瀬の最初の研究著書である。戦後しばらくして、人工衛星が米ソによって打上げられたのを契機に、日本でも本格的なシュミットカメラを建設する気運が持ち上がった。試作機の意味で口径50cmの望遠鏡がまず製作され、ついで昭和49年(1974)に長野県の木曾村に口径105cmの本格的シュミット望遠鏡が竣工した。そのような経緯から、本書は観測的な恒星天文学、銀河の研究の原点とも言うべき歴史的な書物である。


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