資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。
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この当時、東京天文台には本格的な天体暦を発刊する計画があったが、海軍省水路部の計画と競合したために、「理科年表」と名づけた簡便な天体暦の発行で妥協せざるを得なかった。ポケット版で、天文・暦の記事とデータ以外に物理、化学、気象などの科学データも収められている。その理由は恐らく、サイズも内容もよく似ているから、フランス経度局が発行していた『経度局年鑑』を参考にしたためと考えられる。なぜなら、東京大学ではずっと以前から購入されていたし、この発行元は寺尾寿が留学していたパリ天文台だったからである。『経度局年鑑』の方は1970年代に廃刊になったので、この種の総合的科学データブックは世界で唯一であろう。
【参考】創刊号の復刻版が出ている(丸善,1988)。