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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

37 小惑星
平山清次著、『岩波全書』、岩波書店、1935(昭和10)年

平山が1918年に初めて小惑星の「族」の発見を報告した後、海外の天文学者も新たな族を見つけるようになった。こうして、族の存在と概念が確立された時期に、平山が小惑星について研究の現状を概観したのが本書である。12章からなり、10章までは小惑星の発見史と一般特性を紹介している。11章と12章では、それぞれ平山が族を発見した経緯と族の成因を述べていて、本書で最も興味深く重要な部分である。それによれば、小惑星が分裂した母天体から生まれたという考えは、元々は彗星の分裂がヒントになり、平山以前にも小惑星の族に相当する候補を探した海外の研究者が何人もいたことが分かる。平山は、天体力学における摂動理論に基づいて、力学的に厳密な意味で起源を共通にする小惑星のグループ(族)を初めて同定したのだった。

平山は本書の序文で、「確かな二重もしくは多重の小惑星はまだ発見されていないが、それが発見されたら学説はまた、一変するであろう」と述べた。小惑星の周りを回る衛星は過去10年程で多数発見されるようになり、それによって小惑星の衝突起源説は益々確かになってきた。この事実を考え合せれば、平山の上の予言は時代を四分の三世紀も先取りした卓見だったと言うほかはない。

小惑星の平山族発見を報ずる論文は、Hirayama, Kiyotsugu: Groups of asteroids probably of common origin. Astronomical Journal, vol.31, no.743, p.185-188 (1918, Oct.)が最初である。

小惑星
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