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資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

34 美術新報 第9巻第1号(1909(明治42)年)

日本近代洋画の父と称された黒田清輝が寺尾寿を描いたこの肖像画[展示パネル4]は、明治42年(1909)の第3回文部省美術展覧会(文展)に出品された作品である。その制作の経緯を、黒田自身が『美術新報』第9巻第1号(1909年)に次のように述べている。

「私の畫には苦心の作と云うのはない...私の出品は、一年中に出来た畫の中で、最も自分の意に適ふたのを出すのです。...今年の出品に就ては、先頃自分の庭で描いた百合の花と、寺尾博士の肖像とを出さうと思う。今度博士が在職二十五年に就て、其祝意を表する為めに、大學の教授や其他有志の人達から、博士の肖像を二枚こしらえて、一つは博士に贈呈し、一つは天文臺に置くことになって、其の一つは和田(英作)君が畫いた、私の畫いたのは博士に呈する方です。博士には私は古い縁故があるので----博士が前に洋行から歸朝されたとき、私は博士に就て始めて佛蘭西語を習ったことがある。今度博士の肖像畫を畫いたことは、大に幸福に感じたところで、大に博士の性格を表そうと思って畫いた、勿論冩真からでなく、博士に座つてもらって畫いたので、片光線の妙な畫ですがネ」。

和田英作(黒田の弟子で、東京芸大の校長をつとめ、文化勲章を授与された)が描いたもう1枚の寺尾の肖像画は現在行方不明である。


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