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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

27 談天
福田泉(理軒)訓点本、上中下、刊本3冊、文久元年(1861)自序
(印記)「田中芳男旧蔵書」

原著者、候失勒(John F.W. Herschel)による"Outlines of Astronomy"の1851年版に基いて、英国人偉烈亜力(Alexander Wylie)が口訳し、清人李善蘭が漢訳、咸豊9年(1859=安政6)に出版された。

土御門の門人だった福田理軒(泉)は、本書に訓点をほどこして文久元年(1861)に土御門家から上梓した。原著者は天王星の発見と恒星天文学を創始したことで有名な英国のハーシェル (William Herschel)の息子で、この人も著名な天文学者になった。口訳者のWylieも英国出身であり、1847年にキリスト教伝道のため中国に派遣された。英語版原著は好評で版を重ねたため、日本国内だけでも1849(初版), 1865, 1872, 1875, 1876年など多くの版が所蔵される。

当時の天文学の最新知識を、多くの見事な図版と共に分かりやすく紹介していた。詳細な月面地形、太陽黒点の特性、彗星、星雲と星団の図はいずれもみな印象的である。新しく発見された衛星と小惑星、連星、天の川の構造などに関する説明も詳しく、後の版ではドップラー効果や、フーコー振子による地球自転の実験も紹介されていた。

文政年間には、西洋天文学を一般向けに広く紹介した吉雄南皐による天文書、『遠西観象図説』があった。それに比べて、『談天』の図と内容を読めば、西欧の恒星天文学や惑星天文学が19世紀にいかに急速に進展したか一目瞭然であるが、幕末の天文方は明治維新に至るまで、これら新しい天文学の動向に注意した様子は見られない。(中村・伊藤)

談天
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