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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

26 厚生新編
原著者:ショメール
翻訳者:馬場佐十郎、大槻玄沢ら、文化8年(1811)頃-弘化2年(1845)頃
静岡県立中央図書館所蔵本は百巻

原本はフランスのM.N. Chomelが編纂した1709年刊の『日用百科辞典』であり、シャルモ(J.A. de Chalmot)が増補改訂したオランダ語訳本、Huishoudelijk woordenboekを翻訳したものが本書である。文化8年(1811)頃から蕃書和解御用における翻訳事業としてスタートした。これより先、長崎通詞の馬場佐十郎貞由が地図・地理書翻訳のため天文方に出仕していた。この役目を終えて佐十郎が長崎に帰ろうとした矢先、彼の語学の天才的な能力を活用するために、佐十郎の引き止め策としてショメールの翻訳事業が急に計画されたと伝えられる。長期の事業になったため、当初の佐十郎と大槻玄沢以外に、宇田川玄真、湊長安、小関三英、箕作阮甫、杉田成卿ら、多くの翻訳官、蘭学者がかかわった。非公開の事業で江戸時代には出版されなかったが、流出した翻訳の一部が各所に残されている。例えば、長浜の御用鉄砲師、国友一貫斎藤兵衛は、自作した反射望遠鏡のためのサングラスを製作するのに『硝子製法集説』を利用したが、これにも『厚生新編』の翻訳が含まれている。本書タイトルの「厚生」は、『書経』中の「利用厚生」(人々の使用する器具類を便利にし、日常生活を豊かにすること)から取ったとされる。

内容は部門別に分類されていて、天文地土部、生殖部、諸鳥並飛虫類・禽獣部、虫部、魚介部、金石部、人身部、医療治法部、疾病部、食物部、産業部、技芸部など多岐にわたる。項目数では本草・植物に関するものが最も多く、ついで医療関係記事も多数ある。

【参考】『厚生新編』(恒和出版,1978-1979)、静岡県立中央図書館所蔵本百巻の影印本

厚生新編
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