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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

25 西洋時規定刻範
田中芳男自筆写、写本1冊、万延元年(1860)

江戸時代は、季節と昼夜によって時間の単位の長さが変化する不定時法の時刻制度が行なわれていた。そのために、日本独特の和時計が発達し、特に昼夜の長さに応じて時計の歩度を自動的に切替える二丁天符と称する和時計も製作された。ところが天保期頃から、主に米国で規格部品を組合わせて作る卓上機械時計が安価に大量生産されるようになり、日本にもかなりの数が輸入され始めた。西洋機械時計は一定間隔の時間を刻む定時法だから、そのままでは日本の日常生活には使えない。そこで、二十四節気の各節気ごとに、西洋時計の文字盤に日本式の九ツ、八ツの時刻を一緒に書き込んだ簡便な木版刷りが出版販売された。『西洋時規定刻範』はそうした出版物の一つで、東都京橋、寛集亭、K・Hとあるが年記はない。この出版物については、当時、西洋機械時計の研究の第一人者だった昌平黌儒者、佐藤一斎による『洋製測時器記』(天保9年刊)の序文にも言及されている。田中芳男は幕末~明治の博物学者で長野県飯田市出身、博物館の基礎を築き貴族院議員にもなった。種々の雑物を蒐集したことでも知られる。恐らく蒐集癖の一環として、木版刷りの『西洋時規定刻範』を自ら写取ったのではないだろうか。(中村・伊藤)

西洋時規定刻範
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