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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

24 日月五星真象
嘉永2年(1849)写、1鋪
副題:以窺天鏡日月五星ヲ見ル図
(印記)「南葵文庫」、「坂田文庫」、「川邨蔵書」

本史料は、同じ原史料から筆写されたと判断できる写本が他に数種知られていて、河野清太郎なる名前を記した史料もある。「以窺天鏡所観日月五星之図」(窺天鏡は天体望遠鏡のこと)と題する写本で、『明治前天文暦学・測量の書目辞典』などによると、東北大林文庫、津市井田文庫(天保9年写)、飯田市美術博物館に所蔵される。河野清太郎が何者かは不明、また原著者なのか、単に筆写した人物なのかも分からない。津市井田文庫史料の筆写年号は、原史料が天保9年(1838)以前に成立したことを示す。

上部に太陽、月、五惑星の図を彩色で描き、その各々の下部に簡単な説明を付している。各天体の図は形も色もどれも模式的な描き方で、実際に望遠鏡で観測したままを描いたとは思えない。特に、土星の環が図のように惑星本体を取巻くリングのように見えることはあり得ない。説明の多くも直接の観測の記述ではないことを示唆するが、「土星による星食を数度見た」は、著者が実際に経験したことらしく面白い。土星に衛星が2個あるという記述も恐らく伝聞であろう(土星の衛星は、長浜の国友藤兵衛が自作の反射望遠鏡を使って、衛星タイタンを観測したのが、江戸時代に土星の衛星を見た唯一の例である)。

ただ、最後の二十八宿(中国の主要星座)の星団中の微星の個数に関する記述は大変興味深く、科学的価値も高い。星団の小星を数えた、似たような報告は、岩橋善兵衛が製作した望遠鏡による観望会で、橘南谿が寛政5年(1793)に記した『望遠鏡観諸曜記』がよく知られているが、同じ星団でも本史料の方が星の数が多いものもあり、観測に使用された望遠鏡の性能を推定するのに役立ちそうである。(中村・伊藤)

日月五星真象
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