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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

16 星学手簡
渋川景佑編、上中下、写本3冊
(印記)「明時館図書印」
<国立天文台所蔵>

麻田剛立、寛政の改暦を成し遂げた高橋至時、間重富ら、いわゆる麻田派の天文学者の書簡を集めて編纂した書簡集。寛政~享和期の書簡で、至時と重富の往復書簡が主要部分である。署名はないが天文方渋川景佑が編纂したとされる。上巻が22通、中巻が53通、下巻が11通、合計86通の書簡から成る。幕末まで渋川家に所蔵されてきたが、明治前期に江戸時代の科学思想史研究で知られた狩野亨吉が買取り、その後東京天文台に譲渡されたことが最近明らかになった。それが、東京天文台以外に本書の江戸時代の写本が存在しない理由である。

内容は、寛政改暦とそれ以後の至時と重富との暦学研究をめぐる協力関係、天文測量儀器の開発、伊能忠敬の日本全国測量、他の天文方や幕府との交渉など、当時の麻田派天文学者の活動状況を詳細に教えてくれる第一級の一次史料である。大部分が私信であるから、公式の「御用留」などでは知り得ない当事者の心情が吐露されている点でも大変興味深い。(中村・伊藤)

【参考】『日本洋学史の研究』1・5(創元社,1968・1981)に紹介と翻刻文がある。


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