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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

14 御製暦象考成後編
原著:戴進賢(I. ケーグラー)主編、雍正8年(1730)版以外にも版あり
漢籍刊本10巻7冊、乾隆7年(1742)、関東大震災の焼け残り本

本書の編纂を主導したI.ケーグラー(I. Kogler)はドイツ出身の宣教師で、1716年に中国に来た。雍正3年(1725)には清朝の国立天文台長(欽天監正)に任命された。本書では太陽と月の運動だけを、ケプラーが発見した楕円軌道理論を用いて議論しているのが大きな特徴で、天体の楕円運動を中国に紹介したのは本書が最初である。ただし、キリスト教会関係者の立場から、もちろん地球中心の理論になっている。本書は1780年代に我が国に輸入されていたが、間重富は寛政4年(1792)頃に苦労して入手し、麻田派グループの中で研究を開始する。この楕円運動理論は、麻田剛立、高橋至時らにとっては難解であったが大きな刺激を与え、至時らはこの『暦象考成後編』によって寛政の改暦を実現させた。また、『暦象考成後編』が五惑星の楕円軌道を取扱っていなかったために、それを求めて至時は『ラランデ暦書』に遭遇し、『ラランデ暦書管見』を執筆することになったのである。

【参考】『中国科学技術典籍通彙』天文巻第7分冊(河南教育出版社,[1999])

御製暦象考成後編
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