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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

13 御製暦象考成 上下編
原著:何国宗・梅穀成ら、雍正2年(1724)版のほか複数版あり
写本、上編11冊、下編5冊、筆写者・年記欠
<国立天文台所蔵>

本書は、明末の崇禎年間に入華したイエズス会天文学者の指導のもと、徐光啓・李天経が集大成した西洋暦書である『崇禎暦書』を、清朝の康熙帝の時に編纂し直したもの。版本の正式タイトルは『御製暦象考成』、上下編。内容は、太陽は地球の周囲を公転するが、他の惑星は太陽の回りを巡るというティコ・ブラーエの宇宙体系を説いたもの、つまり地球中心の天動説とコペルニクスによる太陽中心説を折衷したような惑星系理論である。惑星の運動はギリシア天文学の伝統である、周転円・導円に基づいていた。主に上編が理論、下編は実際の計算法について述べている。原本では、それまでの伝統的な中国の天文暦算書とは異なり、多くの幾何学的な図を用いて、球面三角法の理論、日月の運動理論、日月食、五星(惑星)運動、歳差を考慮した恒星の座標計算、中星の南中時刻の計算法などを取扱っている。麻田派の天文学者は、本書と『暦象考成後編』とによって西洋天文学を学んだ。

【参考】『中国科学技術典籍通彙』天文巻第7分冊(河南教育出版社,[1999])


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