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世界天文年2009によせて  展示資料一覧

資料解説
資料解説の一部は伊藤節子氏(元国立天文台)と平岡隆二氏(長崎歴史文化博物館)にご協力いただいた。無記名の解説は中村士による。
所蔵機関名表示のないものは、東京大学総合図書館所蔵である。

1 日本国見在書目録
藤原佐世撰、1巻
帝室博物館蔵影印本1冊、1925(大正14)年刊
(印記)「古典保存会」

我が国最古の漢籍(中国書)目録で、当時日本に現存していた漢籍をもとに、勅を奉じて870-890年代に編纂されたと考えられる。貞観17年(875)に宮中で火災が起こり多くの典籍が焼失したことが、この目録編纂の動機になったという説がある。易家から惣集家まで、全部で40の分野の漢籍について、題名と巻数(冊数)を載せている。天文暦学に関しては、天文家に86種、暦数家に53種の漢籍が記される。天文家(書)に含まれるのは、大部分が「客星占」(新星、彗星のこと)、「彗星占」、「日・月暈占」(太陽・月にかかるカサで占う)などの占い書とその関連の星図・星表類である。漢代に盛んだった数理的な宇宙構造論を論じた『周髀算経』も見える。暦数家(書)の方には、中国の暦を扱った元嘉暦、麟徳暦、儀鳳暦(日本では中国の麟徳暦のことを儀鳳暦と呼んだと一般には言われるが、ここでは麟徳暦とは別な書物として明記されている)、中星暦などの暦法書のほか、有名な古代の算術書である、『九章算術』、『海島算経』を収録している。これら天文暦学書の一部は恐らく、天文占、暦作、報時・保時を行なう役所だった陰陽寮で、渡来中国人、朝鮮人の指導のもとに、日本人学生の教育にも使われたのだろう。本書には、中国には現存しない佚(いつ)存書名も含まれているので、貴重な目録である。
【参考】『日本国見在書目録』(名著刊行会,1976)、宮内庁書陵部所蔵本の影印本

日本国見在書目録
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