展示ケース16 解体約図  A00:6553

    解体約図1 解体約図2 解体約図3
    解体約図4 解体約図5 解体約図6

     オランダの解剖学書「ターヘル・アナトミア」を杉田玄白、中川淳庵らが翻訳し、安永3年(1774)に「解体新書」として出版したことは余りにも有名である。その前年の安永2年(1773)、玄白と淳庵は、「解体新書」の一部を抜萃したいわば内容見本を作り、「解体約図」の名で発行した。当時、報帖(ひきふだ)と称して商品や開店の広告などに今でいうチラシがもっぱら使われるようになっていたので、「解体約図」もこれにならったことを玄白自身が後に述懐している。しかし「解体約図」の発行は、「解体新書」の単なる刊行予告や広告のためだけではなく、その刊行に対する世間の反応や幕府の出方をうかがう目的もあったと考えられる。

     「解体約図」は、5枚の木版刷りをばらのままひと組みにして袋に入れたチラシ様の形式をとっている。第1枚目には本書発行の由来を記した「序」と「凡例」、2枚目には人体生理の大要を述べた「解説」が各々載せてある。残りの3枚は解剖図であり、「全身の骨節図」、「胸腹腔の内臓の前面・背面図」、および「全身の脈絡図」からなり、各図には簡単な説明が付けられている。また袋には、「解体新書」を全5冊として刊行する予定であることが記されている。なおこれらの図原画は熊谷元章の手になるもので、秋田藩士、小野田直武が描いた「解体新書」の原画とはことなる。(山口英世)


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