特別展示「博覧会から見えるもの」について
19世紀後半から約半世紀に及ぶ世界史は、「万国博覧会」という気宇壮大な国家イベントによっ
て縁どられていた。この時代、博覧会は単に一時のお祭り騒ぎだったのではない。それは、帝国
主義や資本主義と技術をめぐる大衆的欲望、そしてその技術の切り開く新しい世界像がふんだん
に装飾されたスペクタクルであった。
そのような万国博をめぐり、このほど東京大学附属図書館には、大きな規模の資料コレクショ
ンが収蔵されることになった。このコレクションは、1798年の史上初の国家的な博覧会であった
フランスの産業博から150年近くに及ぶ欧米での博覧会関連の資料一式66点を集めたもので、多数
のカタログや報告書、写真集、パンフレットから、豪華なイラストレーション集や報告書までが
含まれている。今回のこのコレクションを含め、東京大学には国内外の博覧会に関する資料が相
当の厚みをもって収蔵されている。田中芳男コレクションや明治期の国内博覧会についての多数
の公式報告書類や海外の万博に関する資料、19世紀の欧米で出されていた各種の雑誌類、これに
各部局が所蔵している資料を加えれば、大学全体で大規模な博覧会コレクションが存在している
ことになる。
このような収蔵資料を基礎にして、このほど附属図書館においてその大コレクションの一端を
紹介する展示会が催されることになったが、それにあわせた企画として5回にわたる連続講演会
も開催される。ここ十数年、万国博覧会をめぐる芸術や建築から大衆文化まで、さまざまな観点
からの歴史研究が大いに発展してきており、そうした研究の最新状況の一端を、この連続講演会
ではお伝えすることができるものと思う。
東京大学社会情報研究所 教授
吉見 俊哉
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