亀井茲明は旧津和野藩主亀井家の第13代当主であり、1886(明治19)年から1891(明治24)年の5年間、ドイツへ留学します。この間、美学美術分野の研究活動を精力的に行い、生活費を切り詰めてまで様々な美術工芸資料を買い集めます。その範囲は書籍、油絵、写真、陶器などに加え、染織、デザイン画、壁紙、インテリア用布の図案資料など多岐にわたっています。帰国にあたり本国に送ったこれらの資料は約1万6000点、総購入額は約10万円にものぼり、総理大臣の年俸が1万円前後であった当時を考えると、まさに破格のものといえます。 1896(明治29)年7月、36歳の若さでこの世を去ります。 ドイツ留学中、茲明は勉学のかたわら油絵を学び、この関係から絵画彫刻の留学生であった松岡寿、内藤陽三たちと親交を結びます。松岡寿はのちの東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)の初代校長となり、茲明没後、彼が収集した資料はこの工芸学校に寄贈されます。このうちの書籍約2000点が、1923(大正12)年の関東大震災からの復興の途にあった本学図書館に寄贈されました。 |