東京大学は2027年に創立150年を迎えますが、それを控えたこの時期に附属図書館の蔵書が国内の大学図書館として初めて1,000万冊を超えたとの報を受け、大変うれしく思います。
東京大学附属図書館は大学創立から半年を経た1877年10月に、本学の前身となる諸校の蔵書を受け継いで産声を上げました。その後、関東大震災と空襲という災禍に見舞われましたが、特に関東大震災に際しては、ジョン・ロックフェラー・ジュニア氏をはじめとする国内外のご助力を得て復興を果たしました。その後も多方面からのご支援をいただき、今日では東京大学基金のうちの「東京大学附属図書館支援プロジェクト」や「駒場リベラルアーツ基金」といった図書館関係の基金へとつながっています。これまでの皆様のご支援に感謝を申し上げるとともに、今後とも附属図書館の活動に引き続きのご理解とご助力をいただきたいと思います。
私が総長に就任した2021年、本学の基本方針として「UTokyo Compass」を制定しました。この中で「多様な学術の振興」を目的とする施策の一つに図書館の情報提供体制の強化を掲げていますが、大学が保有する学術資産へのアクセシビリティは教育研究活動を支える重要な基盤の一つであり、大学として図書館の機能を整備することの大切さは言うまでもありません。
附属図書館では国内の大学図書館としては最大の1,000万冊の紙の蔵書に加え、電子ジャーナル、電子ブック、データベースといった電子リソースも提供しています。物理的な冊子の蔵書1,000万冊と電子リソースは図書館資料の両輪です。今後もこの両輪ともに維持・発展させつつ、教育研究活動に必要な図書館の環境を整備していきます。
UTokyo Compassは、私自身の専門である海中工学になぞらえて名付けたものですが、本学が誇る蔵書1,000万冊は「多様な知識の大海原」と言えるでしょう。様々な分野の知識にあふれ、それらの分野がお互いに影響を与えながらバランスを保つ蔵書の海には、穏やかな波もあれば、攻略の困難な荒波もあります。それらの波を乗り越えて新たな知見を得たときの達成感は望外のものであり、その知見は次なる挑戦への羅針盤となるはずです。
現在本学に在籍する学生および教職員のみなさんには、この蔵書1,000万冊をそれぞれの学習や研究に活用し、その恩恵を十分に享受していただきたいと思います。
そして、これから東京大学の門を叩こうというみなさんには、この豊かな蔵書が支える学びの環境に、大きな期待を寄せていただければと思います。
令和6年 8月 1日
東京大学 総長
藤井 輝夫