東京大学アジア研究図書館

東京大学アジア研究図書館(2020年開館予定)についてご紹介します

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アジア研究図書館とは何か

                                             2019年4月1日
                                              小野塚 知二
                                  アジア研究図書館長、経済学研究科教授

 

 東京大学本郷キャンパスでは、現在、総合図書館自動書庫の建設工事も完了し、新しい図書館を創る構想がいよいよ実現しつつあります。この新図書館は、図書などの収集・整理・保存・提供だけでなく、デジタル化や情報社会化といった時代の流れに対応した新しい図書館サービスの提供も目指しています。わたしたちが2013年から準備してきたアジア研究図書館も、そうした全体構想の一角を成すものです。

 東京大学本郷キャンパスは、漢籍、中国語文献、韓国・朝鮮語文献、あるいは旧植民地関係資料(朝鮮、台湾、旧満州などに関する本や資料)をはじめ、多数のアジア関係図書を保存しています。それは数十万冊にのぼる一大コレクションといっても過言ではありません。ただし、これらの図書や資料は総合図書館のほか、東洋文化研究所、文学部、経済学部、法学部、農学部、教育学部、情報学環、社会科学研究所など各部局図書館・図書室に分散しています。典型的な例が中国関連図書です。そのため、学生や研究者の立場から見ますと、所蔵する図書を効率的に利用できるような環境は、これまでありませんでした。そこで、2013年7月から8月にかけて、アジア研究図書館の可能性とおよその規模感をつかむために、人文社会系を中心とした関係部局に対して予備的なアンケート調査を行ったところ、多くの部局がアジア研究図書館の計画に賛同してくださり、資料の提供と集約に協力していただけることがわかりました。

 アジア研究図書館は、各部局がそれぞれ保有している図書や資料を集中運用し、利用者に対して総合的で効率的な図書館サービスを提供することを目的としています。現時点では、総合図書館4階の開架部分(約5万冊)、総合図書館自動書庫(閉架式)、東洋文化研究所図書室に併設する漢籍類を置く分館、および人文社会系研究科に設置される分室(漢籍コーナー)の設置が予定されています。2020年4月には開架部分の供用を開始し、その後、自動書庫なども順次供用していく予定です。また、附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)を中軸として、アジア関連文献(ベトナム語、タイ語、ヒンディー語、アラビア語などの各国・地域の現地語文献を含む)の整理を進めるとともに、現地語文献にもとづく地域研究や図書館学に精通した専門図書館員(サブジェクト・ライブラリアン)の育成も計画しています。さらに、東京大学のアジア関係の蔵書の運用だけでなく、学内外のアジアに関する人材と研究資源が集まり、展開する拠点として、文字通り研究図書館の機能を果たすことも展望しています。

 アジア研究図書館は、部局図書館が所蔵してきた既存図書を集中運用するだけでなく、これまで個人で所蔵してこられた諸地域の貴重な現地語文献や資料を寄贈図書として受入れて、研究者の利用に供することも考えています。

 アジア研究図書館の運用を開始し、円滑に運営していくためには、たくさんの課題を達成しなければなりません。夢が大きく膨らむと同時に、課題の多さを前にして足がすくむ思いもいたします。しかし、課題をひとつずつ克服し、遠くない将来にアジア研究図書館の計画が実現すれば、それは間違いなく日本を代表し、世界に誇りうるアジア関係図書館の誕生を意味します。また、東京大学のアジア研究図書館が、将来、内外のアジア研究機関と連携して図書館サービスを提供すれば、日本のアジア研究はさらに進展するでしょう。

 わたしたちは今後、このアジア研究図書館のウェブサイトを使って、さまざまな関連情報や進行中の活動について発信していきたいと考えています。みなさまのご協力・ご支援をお願いするとともに、アジア研究図書館について、忌憚のないご意見を寄せていただきますよう、お願い申し上げます。

 


 

アジア研究図書館の理念

                                            2017年7月12日
                                         アジア研究図書館部会

 

 東京大学アジア研究図書館は、アジア研究と図書館機能の協働を実現し、アジアの時代において人類文明に寄与するものである。

 東京大学憲章の前文において、東京大学は「世界の東京大学」になることを宣言し、とりわけ「アジアに位置する日本の大学」の自覚と、研究の蓄積を活かした「アジアとの連携」の強化を謳った。アジア研究図書館はこの憲章の実現の一翼を担うものである。

 人・もの・知が世界的に大きく循環するなかで、アジアはいまや期を画する新しい段階に入った。近代の光と影を吟味しながら、伝統文化を再考し、いかにして人類文明に寄与するのか。この課題をアジアから問い直すことが、学問共同体の大きな使命であり、そこに東京大学も参画している。アジア研究図書館は、来たるべきアジア研究の場を構築することで、東京大学への付託に応えていく。

 

 東京大学に蓄積されてきたアジア関連資料を集約、再構築し、その知の成り立ちを明らかにすることで、アジアと世界の過去と現在を可視化し、未来を拓く概念を練り上げる場が、アジア研究図書館である。それは、従来のアジア研究の蓄積を尊重しつつ広く新しい文脈へと開き、発見的かつ発信的な新たなアジア研究を浮かび上がらせるものでなくてはならない。そのためには、アジア諸地域の時間と空間を縦横に織りこみ、そこに循環する人・もの・知を探求する、アジア横断的な場の構築が不可欠である。

 東京大学は、それぞれに複雑で多層的な言語文化を持つアジア諸地域の古今の資料と、それを読み解き分析する文理双方にわたる人材と研究教育機能とを一カ所に有している学術機関として、世界に誇りうる優位性を持っている。この資産を十全にいかし、資料を核に研究の人材と知を結びつけ再編するハブとなり、それを世界の知、次世代の知へとつなぐゲートウェイとなるのがアジア研究図書館である。

 したがって、アジア研究図書館は新しい図書館機能の提案でもある。それは、東京大学のアジア関連の資料群を緊密に結び合わせ、広く外に向かって開き、国際的な連携のもとに置くために、資料の運用・保全の機能をたえず向上させていく。そして、その過程で得た知見と技法が、研究教育機能を通じて広く共有されていくのである。

 これは従来の図書館と研究部局の枠組みのみでは果たし得ない役割であり、これこそがアジアをめぐる研究教育機能と図書館機能の協働を掲げるゆえんである。

 


 

アジア研究図書館の将来像

                                                                                                                                   2019年4月1日
                                             小野塚 知二
                                 アジア研究図書館長、経済学研究科教授

 

アジアを軸とした研究資源の集約と研究機能の連携
 東京大学に蓄積されたアジア関係の文献・資料は、本学が培ってきた多様な研究関心を反映して、東アジアのみならず、東南アジア、南アジア、西アジア・北アフリカ、中央アジア、東北アジアなど、アジアの諸地域を遍く覆う豊かな広がりを見せています。これらのアジア関係の文献・資料は、世界に誇りうる膨大なコレクションを形成しているといえましょう。ところが、これらの貴重な資料は、さまざまな学部や研究所の図書館・図書室・研究室に、いわば「分散」して保存され、利用に供されてきました。その理由のひとつは、大学が学問の方法別に組織されてきたことにあります。特定の方法に基づき、対象認識に努めるという知的活動により、学問の伝統が築き上げられてきたのです。しかし、いま、学問の方法は大きく変わろうとしています。「文・理」や専門分野を越えた知の統合・融合・連携が求められています。さらにはデジタルデータという新しい資料が加わりつつあり、この充実と活用も求められています。

 アジア研究図書館はこの付託にこたえるべく、まず、研究資源の集約化を図るものです。アジア諸地域に関する広範な文献・資料を可能な限りアジア研究図書館に集積させるとともに研究者を配置した図書館を目指すことにより、新しいアジア研究を生み出す研究拠点の形成を目指します。そのためには、専門分野間の、また、本学と国内外の諸機関との間の、多様な架(bridging)が必要でしょう。

 

なぜ、アジアなのか?
 アジア研究図書館は、アジアに関する研究を日本から世界に発信していくことを目指しています。その対象とするアジアの領域は東アジアから西アジアにまで及んでいます。では、なぜアジアを研究するのでしょうか。最近までの過去数世紀の世界の歴史は、「進んだ」西洋と「遅れた」非西洋の非対称な関係を一つの基調としてきました。その結果、非西洋における学問は、西洋生まれの概念や枠組みを受け入れるのみならず、西洋対自己という一対一の関心に縛られる傾向を持っていました。しかし、世界の構造は、いま、大きく変化しつつあります。これからの世界では、相異なる歴史や価値観を背負った多様なアクターの間での多方向的な学び合いがますます重要になります。そのなかで人類は非西洋からも多くを学んでいくでしょう。翻って日本を見るなら、そこには非対称な関係のなかで西洋とアジアの狭間に自己を位置づけようともがいてきた歴史があります。日本にとって、西洋・非西洋という二項対立を乗りこえた学び合いのなかで特にアジアと対話を深めていくことには、より良い自己認識を実現する上でも大きな意義があるといえましょう。アジア研究図書館を舞台に展開するアジアを軸とした研究は、そこに集う世界の研究者の多様な関心と共鳴しながら、アジア研究の枠をこえた新たな相乗効果を生み出していくでしょう。アジアを軸に多彩な人と学問が結びつき、行き交いながら新しい知の空間を開拓していくこと、それがアジア研究図書館の願いです。

 

研究する図書館
 アジア研究図書館の構築は、新しい知のあり方を模索し、方法融合的な新しいアジア研究の基盤となる試みです。この基盤を構築するためには、良質な研究資源を集約させるとともに、専従の研究者ならびに専門図書館員を擁することが求められます。アジア研究図書館におけるアジア研究には、第一に、アジアに関する文献の総合的な研究があってしかるべきでしょう。文献の内容(テクスト)だけでなく、文献学・書誌学・古文書学、さらに文献を成す紙・印刷・筆記法・製本・造本などについての研究が求められます。また、専門図書館を土台にして形成され、専門図書館を支える人材として「サブジェクト・ライブラリアン(専門図書館員)」あるいは「キュレータ」等の高度専門職の配置・育成を行う必要もあるでしょう。

 

アジア研究の世界的な拠点を目指して
 アジア研究図書館が世界規模の研究拠点となるためには、東洋文化研究所のアジア研究図書館分館、人文社会系研究科のアジア研究図書館分室(漢籍コーナー)、附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)などの連携・協力によって、アジア研究図書館が高度なレファレンス機能を発揮するとともに、研究・発信を進め、内外の同種の研究図書館との間に緊密な協力関係を構築する必要があります。また、アジア研究図書館は、学外ならびに外国人研究者の受入態勢も整備して、新たな研究空間を提供することも企図しています。これらの新たな営みを通じて、唯一無二の図書館を世界の仲間とともに創り上げていこうではありませんか。

 

 


 

 

アジア研究図書館の組織

お問い合わせ先

アジア研究図書館に関するお問い合わせは、メールにて以下までお願いします。

 東京大学アジア研究図書館 担当
   asialib@lib.u-tokyo.ac.jp