あびだるま だいびばしゃろん

29. 阿毘達磨大毘婆沙論   200巻 57冊


黄檗版一切経之一
唐釈玄奘奉詔訳 寛文9年至延宝9年宇治黄檗山万
福寺刊本 闕巻第91、第92首4丁、第160至第200
毎半葉四周双辺 無界 10行20字 内匡郭22、0×14、2糎

「阿毘達磨」とは部派仏教の論書のことで、仏教の教理を体系立てて解釈したもの。大いなる注釈という名をもつ本書は発智論の注釈書で、北インドの有力な一派であった説一切有部の教義研究の集大成である。漢訳では玄奘訳が広まったが、余りに大部であったため倶舎論ほどには読まれなかった。

 本書を収める黄檗版一切経は、黄檗山万福寺の鉄眼道光が、明の万暦版大蔵経、即ち径山蔵を重刊した方冊の大蔵経であり、寛文9年から延宝9年にかけて刊行された。

 エリオット旧蔵の黄檗版には残闕が多い。のちの印本による補配もあり、大毘婆沙論もその一例で、各冊末には享保3年、瑞龍寺が武蔵天恩山羅漢禅寺にあてた書信を刻す。一切経を大切に保管するようにとの訓戒から見ると、羅漢禅寺でこの論書を紛失し、改めて後印本を求めたものか。印記などはなく伝来は不明だが、羅漢禅寺に由来するものかも知れない。

(丘山新・古勝隆一)


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