展示ケース18 和蘭全内外分合図  A00:6552

    和蘭

     わが国で翻訳された最も古い西欧解剖図譜である。ドイツの医師レムメリン (J. Remmelin) の著書「小宇宙図観 (Microcosmographicus)」の初版本(1613年刊)のオランダ語訳版(1667年刊)を原典とし、オランダ語の名通詞とうたわれ医学にも通じていた本木了意(庄太夫)が天和2年(1682)に訳出した。「解体新書」の出版を遡ること92年も前のことである。

     本書完成から90年を経た明和9年(1772)に、その写本が周防(山口県)の医師、鈴木宗云の手によって刊行された。この刊本は「和蘭全躯内外分合図」、「験号」と各々題する2冊からなる。前者が図によって構成された本体であり、それがここに展示されている。

     本書は、原典と同じく工夫をこらしたユニークな作りになっていて、3つの解剖図からなる。第一図には男女2体が向い合わせに、また第二図と第三図にはそれぞれ男、女が単独で描かれている。書名にある通り、各図とも折本形式をとっており、入子(いりこ)型に人体内部の臓器・系統が15枚の紙片で作られていて、それを表面から1つずつめくってゆくと、各臓器・系統の形や位置関係が容易に分かるようになっている。描かれた男女の容貌、髪型などは、原典の西欧人から日本人のそれに変えられているが、体つきのほうは西欧人風のままで、いささかアンバランスなところがユーモラスに感じられる。かのシーボルトも本書を手に入れて、ヨーロッパへ持ち帰ったといわれる。(山口英世)


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