「六物」とは、一角(ウニコウル)、夫藍(サフラン)、肉豆蒄(ニクズク)、木乃伊(ミイラ)、噎浦里哥(エブリコ)、人魚の6種の薬物のこと。そして、これらについて天明6(1786)年、大槻玄沢が蘭書に基づいて考証したのが「六物新志」。人魚の肉を皮膚の黒色斑上に貼ればそれを消し、その骨には止血の効力があり霊薬だと記しており、玄沢は薬用としての人魚とその実在を信じていた。
草木鳥獣の写生にすぐれた才能を発揮した江戸後期の画家、服部雪斎(1807?1882)が描いた二十余枚の本草(薬用植物)の彩色図譜。これがどのような経緯でいつ頃作られたかは不明であるが、いずれの画も花から根に至るまで微に入り細にわたって実にリアルに描かれている。その所蔵者であった岡田滄海からこの図譜を見せて貰った友人の中国人医師は、植物とくに生薬として使用される根の部分の色、かたちをその植物の本質までも示すかのように正確に描いた画家の観察力と描写力に驚嘆して、「本草綱目」といった中国の代表的な本草書の図にも勝ると絶賛した一文を図譜の後に書き添えている。(山口先生)
歌川芳綱[生没年不明]は、幕末の浮世絵師。歌川国芳の門人。草双紙、滑稽(こっけい)本、人情本の挿絵のほか,武者絵,風俗画などを描いた。