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新図書館でどうなる知の未来 ― 館長・副館長インタビュー ―

【詳細版を公開しています。 こちらのページ もご覧ください】

新図書館では何が起こるのか

―これまでの図書館は、大部分の東大生にとっては、本を閲覧して勉強するというだけの場所でした。これから総合図書館の地下には、議論やグループワークをすることができる新しい空間がつくられようとしていますが、そもそも「新図書館」はいったい何を目指して、そこではどのようなことが起こってほしいと考えていますか?

 

久留島:新図書館は、人や知が「集う」「結ぶ」「開く」ことによって、新たな知が生まれる場だと捉えています。例えば、ライブラリープラザのような場所に人々が「集う」、知の集積体である本と人がそこで「結ぶ」、さらにそこにいない人たちにも知を「開く」ということが起こっていくと思うんですね。開くというのは空間的なことだけではなく、時系列についても言えて、世代と世代をつなぐことにもなります。図書館という場に集まった人たちが、本を媒介に融合して何かが起こる。それを発信することによって、また新たに知の集積体に加わってゆく。知はこうして積み重ねられ、世代を超えて存在していきます。図書館とは、空間的に異なるものをつなぎ、過去・現在・未来をつなぐ機能を持つ、そういうところと考えています。

 

堀:久留島先生の考えとまったく同じで、別の言葉で言うならば「文理融合の拠点」としての新図書館、「価値創造の拠点」としての新図書館になると思います。東京大学は総合大学ですが、文系と理系、分野を超えた人たちが自然に出会って、何かが生まれる可能性がある場所は、じつは、学内には図書館しかないんですね。しかもそこには豊富な情報資産がある。新しい知識というのは、過去に蓄積された知識をいったんバラバラにして、新しい文脈で組み替えることによって生まれるものですけれど、そういった知識を生み出す循環が起こっていくような場所として、図書館が有効に機能するようにしたいですね。

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知へのアクセスを保証する

―図書館の利用者が最も関心があるのは、自分が探したい資料にいかにアクセスできるかということだと思います。研究において必須である「資料との出会い」という点では、どのような工夫を考えていますか?

 

堀:学術資産へのアクセスは、まさに図書館の中核的な機能のひとつです。「リソースディスカバリ」がひとつのキーワードになっていて、世界中で様々な試みが始まっているけれど、僕が人工知能の専門家として言えることは、単に検索技術を工夫するだけではうまくいかないということ。中身のリソースをいかに組織化するか、探しやすいように付加情報を整備しておくかということの方が大事。例えば東大の中でも、図書館の本だけではなくて、いろいろな部局にいろいろな学術資産があるけれど、それらが必ずしも把握されていないんですよね。研究室の片隅に置かれていたり、埋もれていたりする貴重な資料がたくさんあるらしい。東大が持っている学術資産にきちんとアクセスできるようにするためには、まずは、一度きちんと調べ上げて、埋もれた資料を見つけ出したいと思っています。こういった整理こそ、図書館が得意なことだと思うので。資料の関連付けの仕方も、これまでのようなひとつの体系で分類するのではなくて、いろいろな文脈でいろいろな関係が見えるように複数通りのタグ付けをするとか、そういう柔軟に検索できる仕組みを取り入れたいです。

 

久留島:図書館が扱う学術情報は、書庫としての物理的な情報空間から、ネット上の電子的な情報空間にまで広がっています。紙の本であれば、分類して棚に並べておけば、利用者が自分で手に取って本と出会うことができます。一方で電子的な資料は関連資料が見つけづらい側面があり、電子化されたものだからこその、資料と出会うための仕掛けが必要になります。本と人を結ぶ媒介者である図書館には、電子化された資料にアクセスしやすくするために、学習や研究で役に立つ情報を精査して発信するという役割が求められると思います。

それからもう一点、私は日本の中世史の研究をしていますが、物としての史料を保存することはとても重要だと考えています。なぜならそれぞれがオリジナルなものだからです。でも、後世に貴重な資料とみなされるかどうかは、現在の価値観では判断できないんです。そういう観点から言うと、図書や資料は体系的に残していかなければ、貴重な学術資産がいつの間にか、誰も知らないうちに抜け落ちてなくなってしまいます。今後は物としての本を体系的にかつ良好な状態で残していくための環境をつくっていく役割も、図書館にとっては重要になってくると思います。

 

 

図書館をワクワクする場所に

―新図書館計画を進めるにあたり、東大生に対して期待していることはなんでしょうか?

久留島:ライブラリープラザには新しい知を生み出す様々な仕掛けが用意されます。その場に参加した人たちが能動的に関わって影響し合うときこそ、本当に新しいものが波紋のように次々と生まれてくるのだと思います。学生たちにはぜひとも「ワクワクするものを生み出そう」という姿勢で図書館に関わってもらえたら嬉しいです。

 

堀:いいものをつくるには、自分たちがつくりたいと思うもの、欲しいものを追求していく姿勢が重要だと思います。学生や図書館に関わる人たちみんなが楽しんでやっていることが、新図書館という場で花開いていくといいですね。

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