東大新図書館トークイベント6
<場所>の未来 ~ 新しい図書館を描き出す(根本彰教授)
【2013年秋冬期イベントシリーズ:再生(リノベーション)する図書館】
2013年12月16日(月)18:30-20:30 東京大学総合図書館 1F 洋雑誌閲覧室
能動的な学習法(アクティブラーニング)の広がりをはじめとして、教育のあり方が大きく変わろうとしている中で、大学図書館は学修の場所として役割の再定義が求められています。図書館職員による問題提起、根本彰教授による講演「東大図書館はどういう<場所>か」、そして初の試みとなる参加者全員参加型のオープン・ディスカッションという3部構成により、これからの図書館の姿について様々な立場から考えるトークイベントとなりました。
Speakers
*プロフィールはイベント当時のものです。
根本 彰 Akira Nemoto
東京大学大学院教育学研究科教授。日本図書館情報学会会長。東京大学教育学部卒業、同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。図書館情報大学助教授、東京大学大学院教育学研究科助教授などを経て現職。 著書に『情報基盤としての図書館』(勁草書房、2002年)、『続・情報基盤としての図書館』(勁草書房、2004年)、『つながる図書館・博物館・文書館:デジタル化時代の知の基盤づくりへ』(東京大学出版会、2011年、共編著)、『理想の図書館とは何か:知の公共性をめぐって』(ミネルヴァ書房、2011年)など。2013年には編著書『シリーズ図書館情報学』(東京大学出版会)1~3を上梓するなど、図書館情報学分野における研究・教育活動を精力的に行っている。
イベントレポート
東大図書館職員が問いかける「これからの大学図書館」
はじめに、新図書館計画職員課題検討グループ・ライブラリープラザ検討チームの山寺紗矢香から、新図書館地下1Fに設置予定のラーニングコモンズスペース(ライブラリープラザ)について考える中で見えてきた課題について問題提起が行われました。
大学において分野横断的かつ能動型の教育が広がる一方、学術情報が電子化されオンライン環境での学習・研究が可能になっている今、場所としての大学図書館の役割は「人と人をつなぐ」「人と情報をつなぐ」ことだと考えます。能動型学習の場とされるラーニングコモンズで真に「人と人をつなぐ」「人と情報をつなぐ」には、研究室では出会えない人との交流、学生と教員の交流、教員同士の交流の機会のアレンジや、授業との連携などをはじめとする様々な形の学習支援、研究支援、教育支援が必要です。これからの大学図書館では、図書館職員がマネジメント力、コミュニケーション力、企画PR力を向上させ、来館利用するアドバンテージの創出、「異なる人」との交流による刺激、新しいアイデアが生まれる場所づくりを目指すべきではないか、との提言がありました。
東大図書館はどういう<場所>か
根本教授から、「場所」としての東大図書館についてお話しいただきました。古代アレキサンドリア図書館の時代から、知を蓄積する場所だった図書館が、近年、資料がデジタル化する中で、どのようにして「場所」としての存在価値を見出せばよいのか。総合図書館単独で考えると蔵書数はたいしたことはないが、東京大学の図書館・室の蔵書数を合計すると日本一で、この資源を生かさない手はない。各部局図書館・室のマネジメントは各部局にゆだねられているため難しい点はあるが、資料・情報・知識を共有する「場所としての図書館」の再認識をし、総合図書館の存在意義を含め、全学と東京大学附属図書館との関わり方を議論すべきだとの提言をいただきました。また新図書館については、紙資源を身近に置いておくための自動化書庫、専門的な資料・情報・知識サービスの場としての「アジア図書館」の新設、ライブラリープラザ、アクティブラーニングスペースづくりなど、さまざまな可能性が期待できるとのお話でした。
オープン・ディスカッション
「今日からあなたは東大生です。これからの大学図書館で何をしたいですか?」という題でオープン・ディスカッションを行いました。参加者と根本先生、石田副館長、さらに新図書館の建築計画で中心的役割を担う川添講師が九つの班に分かれ、図書館職員と学生ボランティアACSが各班にファシリテータとして一名つきました。BGMが流れる中、洋雑誌閲覧室で輪になって議論するというこれまで見たことがない光景です。ディスカッションの二十分間は活発な議論と笑い声が絶えず聞こえました。
各班から発表された意見では、勉強会、プレゼン発表会、落書できる書籍など、<場所>に集う人やモノと相互に繋がることを期待するものが多くありました。ほかに宿泊や飲食可の滞在型図書館や電子書籍や図書館ストリートビューなどを備えたハイブリッド図書館への意見も寄せられました。これらの意見の中ですでに取り組みを始めているもの、実現可能なものもあるという石田副館長の言葉に会場がどよめく場面もありました。参加者の東大図書館に対する期待の大きさが感じられました。
イベント概要
概要 |
能動的な学習法(アクティブラーニング)の広がりをはじめとして、教育のあり方が大きく変わろうとしている中で、大学図書館は学修の場として機能の再定義が求められています。今回はこれからの図書館の姿について、皆様とともに考える会となるよう、3部構成で開催いたします。ご来場の皆様がともに考え、議論していただくワークショップの形式となります。 本学の図書館・室を利用されている皆様や、図書館関係の方、大学関係の方のみならず、これからの図書館にご関心をお持ちのすべての方にご参加いただきたいと考えております。皆様のご来場をお待ち申し上げます。 |
開催日時 | 2013年12月16日(月) 18:30~20:30 |
講師 | 根本彰(東京大学大学院教育学研究科教授) |
会場 | 東京大学総合図書館1F 洋雑誌閲覧室 |
来場者 | 48名 |
タイムテーブル | 1部 18:35-19:00 東大図書館職員が問いかける「これからの大学図書館」 2部 19:00-19:45 講演「東大図書館はどういう<場所>か/根本彰教授(東京大学大学院教育学研究科) 3部 19:45-20:30 全員参加型のオープンディスカッション/根本彰教授、石田英敬附属図書館副館長をまじえた会場全体での意見交換 |
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