附属図書館長からの挨拶

館長挨拶

 東京大学附属図書館は2010年に新図書館計画の検討を開始し、新たな学習・教育・研究の拠点を形成する事業として進められ、2020年に完了しました。図書館前広場の地下には、総合図書館別館が2017年に竣工し、能動的な学習、学術的な交流のためのライブラリープラザと、本学創設以来140年あまりにわたって収集・利用してきた貴重な学術研究資料を、永く後世が利用することを可能にする自動書庫を新設しました。また、本館は、2020年にアジア研究に関する資料を集中化し、各国の研究者が集う世界最高水準のアジア研究図書館を館内に開設しました。さらに内装を創建当時のデザインに一部復元し、図書館の歴史性を継承すると同時に、耐震措置も施され、より厳かに、より安全になりました。本館・別館をあわせた新たな知の拠点として、学習・教育・研究を支援していきます。

 さて、東京大学附属図書館の歴史をひもとくと、1923(大正12)年の関東大震災によって煉瓦造りの建物は全焼し、それまでに蒐集された和漢洋の貴重な資料の多くは灰燼に帰しました。国内外の支援を受けて1928(昭和3)年に現在の総合図書館が再建されてから、約90年の時間が経過したところです。
 この間、全学における学習・教育および研究活動を支援する使命は変わらないものの、附属図書館に求められる役割や機能は大学の発展や社会環境と共に変化し、そして多様化しています。これまで附属図書館では、基盤的な学術情報を安定的に整備するため、学術雑誌・電子ジャーナル等購入経費の全学共通経費化を実現し、また、学習・教育に資する学生用図書の充実にも努めてきました。さらに、本学で創出される世界水準の研究成果を国内外に広く発信し、社会に還元するために、学術機関リポジトリ「UTokyo Repository」を構築・運営し、学術論文等の公開・オープンアクセス化にも力を入れています。
 また、東京大学が保有する学術資産を電子化し、発信するデジタルアーカイブズ構築事業を進めています。学術の多様性を支える基盤の強化を目指して、全学の部局と連携してデジタルアーカイブを構築することにより、時と場所を選ばすに本学の豊かな学術資産にアクセスできる環境を整えることに力を注いでいます。
 現在は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、図書館としても様々な方策を講じていますが、これを機に開発・整備した体制を、Post-Coronaの時代にも図書館の基本サービスとして機能させていくことを模索しているところです。

 東京大学附属図書館は総合図書館、駒場図書館、柏図書館の拠点図書館と、様々な学問分野を基礎とする27の部局図書館から構成されています。各館それぞれが特色を活かしながら「共働する一つのシステム」としてさらに連携・協力を進め、知の協創の世界拠点を形作ろうとする東京大学の取り組みの支えとなるよう、努力して参りたいと存じます。利用者の皆様には図書館を活用いただくとともに、一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。


東京大学附属図書館長
坂井 修一