附属図書館長からの挨拶

 

 

 

 

 

 

 

東京大学附属図書館長

久留島 典子

 東京大学附属図書館は、現在変革のときを迎えています。情報通信技術の進展により、学術情報において電子ジャーナルやデータベースの形態がごく普 通のものとなったばかりでなく、教育・研究手法や、学術コミュニケーションのあり方自体も大きく変化しつつあります。また、社会の様々な課題が複雑化・グ ローバル化する中、人々が多様な知恵を出し合い、連携協力して行動をおこすことが一層必要とされています。東京大学としても、このような課題解決に貢献で きるよう、世界最高の学びの場作り、卓越した研究者の輩出、知の協創の世界拠点の形成などを重要な目標に掲げており、これを学術情報基盤の面から支えるこ とが附属図書館の役割といえます。

 これまで附属図書館では、電子媒体と紙媒体それぞれについて基盤的学術情報を安定的に整備するため、学術雑誌・電子ジャーナル等購入経費の全学共 通経費化を実現し、また、学習・教育に資する学生用図書の充実にも努めてきました。さらに、本学で創出される世界水準の研究成果を国内外に広く発信し、社 会に還元するために、学術機関リポジトリ「UTokyo Repository」の構築、拡充にも力を入れています。これらの取り組みを、今後も維持・強化していく必要があることは、言うまでもありません。

 しかしながら、新たな課題に対応するためには、これまで附属図書館が果たしてきた学術情報の収集・保存・安定的提供という各機能を高度化するだけ ではなく、大学図書館としての新たなあり方を実現することが求められています。そして、このような背景のもと、現在全学的プロジェクトとして進行している のが、新図書館計画です。

 新図書館計画では、電子媒体と紙媒体の学術情報を融合させ、文理あるいは分野の垣根を越えて多様な人々が学び、研究し、交流できる場を作り、そこ から新たな価値を生み出す「知の協創」のための環境を提供します。また、本学の強みであるアジア研究に関する資料を集中化し、各国の研究者が集う世界最高 水準のアジア研究図書館を設置します。

 このような未来を展望した新しい機能を持つと同時に、これまで蓄積してきた人類の多様な知的財産を確実に後世に伝えていくこともまた、附属図書館 の重要な使命といえます。地下に新設される自動化書庫はそのための取り組みの一つとして、文系雑誌のバックナンバーなどを保管・蓄積し、学術文化の継承を 保証するものです。これらをいかに活用し、現実空間と仮想空間を連動させた知のアーカイブを構築していくかが、新図書館計画の大きな課題です。

 今後、附属図書館のあり方を変えていくには、新図書館計画で刷新が進む総合図書館をはじめとして、同じくキャンパス拠点図書館である、駒場図書 館、柏図書館と、様々な学問分野を基礎とする32の各学部・研究所図書館・室とが、それぞれに変革に向けて歩みを進め、緊密なネットワークを形成して、 「共働する一つのシステム」として有機的に連携協力していくことがいよいよ求められます。

 東京大学附属図書館は、「知の協創の世界拠点」たるべき東京大学の取り組みの支えとなるよう、今後、新図書館計画を着実に実現してまいります。計画推進には多くの困難が予想されますが、利用者の皆様にはご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。